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ACCUMU 1989 Vol.1

現代詩


 

月刊ユリイカ所収
 

帯を梳く,帯に梳かれる


大隈 敦子 ATSUKO OSUMI
 
 帯を梳く,帯に梳かれる 細なう 糸 ゆび ゆびの間 織り 越しに 木 木 膚 かすれる,まわる,伏せられながら,その枝の ひろがっていく
 
               またそらは
高く伸びる 私たちのうしろがわで それを
目の端にも入れられない 先を急ぐひとに
押し戻されながら 鈎状の半身 肩 はりが
ねを伸ばす 上り階段 長い乗継ぎの プ
ラットホームを歩く 800m ホームをわ
たっていく
数分
 
そらが打たれたようにけざやかな あおい頬を抜いていても
帯に梳かれて 行ってしまう
 
水=双 足うらは キーをたたく 八つの頬 白茶 うぶげ の封
筒に 打ちしだかれていく土地の勾配
乾いて(いる),
乾きかけて(いる),
載せて(いる),
湿って(いる),
浸して(いる),
吹く,吹か(れる),芽は
返る,
懸想する,懸想する,
目の中へ入る,
しだれて(いる),
しだれさせて(いる),
指 甲 差す,
差し返す
 
疲れた脚から滴ってくる
水気 たかさをひとしく 囲んでいく線のもの狂い
優しいつので破る皮膚穴呼吸
先細に 尖がらされる 息をつめる
今はシャワーのように深い毛あしを,一面のからだからなびかせて
至ろうとしている
 
心配は 折れ線のようにかたむく 角張りな
がら 取りもどしたり あふれさせたり 数
メートルの距離で 鴨鳥をみる 水面 なだ
らかな くびからみどりのむねへ ひとしき
り傾斜して尾羽へ 尾羽からくびへそして嘴
へ めぐらされていく
数秒
 
そらの低いところで
         深く覆われる
私たちは
                ゆさゆさ
梳かれて
行ってしまう
 
 
 

早稲田大学同人誌サークル「行李」より
 

メッセージ


 
小林 弘明 HIROAKI KOBAYASHI
 
一日中研究室のコンピュータの端末に座っ ていると時々頭がボンヤリする SYNTAXERRORがリターンキーとともに増殖する ありもしないコマンドを送ってみたり 星印をディスプレイに並べてみたり ぼくは椅子にはりついた身体を窓辺にもっていく
 
研究室は郊外の丘陵地にあり小鳥が群れている 鼻先の冷たいもの 今日は天気「………。」と君の名前を繰り返すような頭の状態は青空に浮ぶ雲 ぼくは白い雲の輝きを眺める 小鳥の姿が見えない コンピュータの端末はさえずる雲の高さの本体から小鳥の軌跡が流れインプット待ちの発信音は繰り返す ぼくには遅れる小鳥の波動 小鳥が見えない意味は? と考えるのはぼくのせいではない 繰り返す
 
       *
 
 
君の帽子の上の雲
赤レンガの煙突が遠くに崩れている
コスモスの川原で帽子にかくれる
地平線のコスモス
コスモスは煙突を風化させる
赤い煙突と帽子の共通点をあげよ
寝そべって読む詩集
川原に沈む線分
遅れて小鳥は直線をひく
コスモスの地平線

にぶらさがっているものがある
赤い煙突はなつかしむ
帽子にかくれる君は耐えている
しかし
繰り返し直線をすべる
Lは風にあおられ届くだろうか
Oは風通しがいい
Vは逆立ちして
Eは這いつくばって
コスモスの川原
EVOLと折り重なる
花は揺れない
コスモスの地平線
空には
愛がぶらさがっている
鳥は直線を引く
 


早稲田大学同人誌サークル「行李」より
 

散歩


 
湯下 秀樹 HIDEKI YUSHITA
 
昨日,あなたと
夜の散歩に出てから
記憶を逃がしてしまったらしい
朝まで,さまよっていると
足もとからすべて,漂白されてくる
 
つまずきそうになる
坂の途中で手を離し
危険な加速に身をまかせ
ひとりの遊戯にひたる
ふりかえると,あなたは
見知らぬ人のように坂をおりてくる
 
あなたが追いついて
互いの目を見ると,そこに
薄い色で疑惑に似たものが
まとわりついているのに気づき
手をつよく握る
 
体温だけをよりどころにして
氷塊のように自動車の滑る
朝の通りに
消えることのない刻み傷をつけるように
二人で駆けてみる
 
 

 

手紙


湯下 秀樹 HIDEKI YUSHITA
 
  目覚めると  日は高く
  百合にしかられる
  僕は女の子に手紙をだした
  机上の切り花
  一昨日,大家のくれた
  庭の百合
  部屋中見下ろし
 
 空いっぱいに萌す雲に
吉凶の趨勢をたずね,角のたばこ屋まで。
 白銀の雲頂はひろがりをみせ始め
朝顔とひらく。手紙は読まれたろうか。
 
 午後になると,空は脈絡をうしない
夕立になる。切り花は,青銅の水に黙する。
バイクが通ると表に飛び出し
その度に,からの郵便受をのぞく。
 
  郵便屋さーん
  失念したように
  百合の花弁も匂わない
  忘れちゃいけない
  わきかえれ 海よ
  カーテンの外
  びんぼう びんぼう
  と,うるさい雨垂れ
 

早稲田大学同人誌サークル「行李」より
 

はひふへほのうた



北山 花嵐 KARAN KITAYAMA
 
あおひじうたんにのって
ゆったりとしたれげえの
りずむにのって
ぼくはそらをとぶのだあ
 
なんごくのそらのいろのうえに
すわって
ぼくはそらをとぶのだあ
 
めろでいがじうたんを
したからささえてくれるのだあ
 
だからぼくはいま
くうきなんだあ
 
あかいじうたんはめのしたに
なんぜんきろめえとるもしたに
もう
とおいんだあ
 
ふわありふわありとかぜが
ぼくをはこんで
くれるんだあ
 
たいようさんがそらの
もっとうえから
ぼくをよんでいるんだあ
 
りずむがぼくのしんぞうを
めろでいがぼくのたいじゅうを
ささえてはこんでくれるんだあ
どんどんそらへ
とおいとおいところまで
ぼくはとんでいくんだあ
 

ジプシー


北山 花嵐 KARAN KITAYAMA
 
郷デハ忘レラレ
他所デハ名モ無ク
彼ノ地ニ在ナガラ
時代ノ中ニ身ヲ置カヌ
想イ,昨日モ
夢幻ノ,明日モ
スデニ
何処カニ
置イテキタ
 
 

Something From Father to Son


北山 花嵐 KARAN KITAYAMA
 
蒼白に空を包む
巨大な幕の雲
陽はその奥に昇り
女神は両手をひろげて−
 
その彼方瓦礫のはてを
眺めながら
パンとコーヒーを分けあい
話すことなく
something from father to son< BR> 
紺碧に広がる海
銀糸立ち昇り
女神は水平線に立つ
両手を掲げて−
 
その彼方時の向こうを
見つめながら
肉を切り分け
訊くこともなく
something from father to son
 
玲瓏の山々に映る茜
染め上がる大空
女神は地平線に去り
微笑を投げかけ−
 
その彼方世の終わる所
眺めながら
酒を注ぎあい
語り合うことなく
everything from father to son

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