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| ACCUMU Vol.3 1991 |
情報の科学
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| ENIAC |
コンピュータ技術の発展
1960年代になるとトランジスタなどの素子を個別部品として使うのではなく,あるまとまった機能をもった回路に作り上げたいわゆる集積回路(IC)の技術が発展してきた。コンピュータの製作にも早速このICが採用されるようになって,コンピュータの世代としても第3世代を迎えることになる。ICを採用することによって,コンピュータの信頼性は飛躍的に向上し,複雑な大規模なシステムを構成することが可能になった。
また,この世代になると,小型から大型までのコンピュータを系列化し,同じ系列では命令体系を共通にして,系列システム間でのプログラムの互換性を保つ方法がとられるようになった。この系列化に大きく貢献したのはマイクロプログラミング技術である。この命令体系を共通にしてプログラムの互換性を保つという考え方はソフトウェアの資産を引継ぐことができるという大きな利点があるため,現在でも広く採用されており,メインフレームでは基本的な命令体系としては1960年代のものが用いられている。
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| IC(集積回路) |
第5世代コンピュータ
数年前より第5世代コンピュータという言葉が広く使われているが,これは前節までに述べたコンピュータ技術史の区切りとしての第4世代コンピュータに続く第5世代ではなく,我が国の通産省が1982年から1991年の10ヵ年計画で組織した第5世代コンピュータ開発プロジェクトにより研究開発が進められているコンピュータを指すことが多い。この通産省のプロジェクトを進めるため,新世代コンピュータ技術開発機構(ICOT)という研究組織が作られ,学界,業界の協力の下に第5世代コンピュータの研究開発が進められている。このコンピュータの特徴としては,数百台規模のプロセッサを同時に稼働させる並列処理方式を採用し,また論理プログラミングと呼ぶ新しいプログラミング方式を採用して,科学技術計算や事務処理ではなく,記号処理や人工知能(AI)という新しい応用を目的としていることである。これらの特徴は,従来のコンピュータとは異なる斬新なハードウェア,ソフトウェアの技術の開拓を目指しているといえる。
このプロジェクトの発足を契機に従来のコンピュータ応用の柱であった科学技術計算や事務処理に対抗する形で,記号処理,AIおよび知識処理が新しいコンピュータの応用分野として全世界の注目を集めることとなり,各所でAIや知識処理に向いたコンピュータの研究開発が盛んになってきた。これらの新しいコンピュータを特徴付けるものは,第4世代までの世代を特徴付けた真空管やトランジスタ,集積回路などのハードウェア素子技術とは異なり,推論,連想,学習,エキスパート・システム,問題解決,知識ベース管理,知的プログラミングなどを核とする応用技術である。
現在のAIでは,人間が行う推論や学習および知識の管理をコンピュータが記号を用いて代行できるように,それらの処理過程をモデル化する方法論が主流になっている。すなわちAIにおける処理では,数値データよりも記号データに対する操作が中心となる。またAIにおける記号データ操作では文字列処理などのように単独の記号を対象とするのではなく,記号間の関係を処理対象とするのが特徴的であり,処理対象として,文字列,画像,図形などの一次情報よりもむしろそれらを記号化して関連付け,知識として抽出する点で,AIが必要とする処理機能は記号処理の基本操作の大半を含んでいるといえる。また,知識処理などの最近のAI応用では記号操作が主となり,最近の記号処理,すなわち第5世代コンピュータの主な適用分野としての記号処理はAIそのものといってもよい。
一般的に,AIの応用プログラムを高速に処理する専用コンピュータをAIマシンと呼ぶが,第5世代コンピュータの適用分野が記号処理すなわちAIであることから,第5世代コンピュータはAIマシンであるとも言えよう。また,記号処理応用分野においても,最近,問題を複数個のプロセッサによって分担協調して処理する並列マシンの研究開発が盛んになっている。特に,この並列マシンを記号処理やAI向きに専用化した並列記号処理システムや並列AIマシンが第5世代コンピュータの主流をなしている。
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| ワークステーション (キャノン潟lクスト推進センター提供) |
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| マイクロプロセッサ (インテルジャパン提供) |
ニューロコンピュータ
脳の構造を模倣して,その神経回路網を電気的にあるいは光素子などによって構成して情報処理を行わせようというのがニューロコンピュータである。
ニューロコンピュータの研究は1950年代から60年代にかけてかなり活発に進められ,パーセプトロンなどの提唱もあったが,パーセプトロンの限界説などが出され,また,ノイマン型コンピュータの隆盛などによりニューロコンピュータの研究は下火になった。
しかし,1980年代になると再びニューロコンピュータが脚光をあびるようになった。それはノイマン型コンピュータの性能の限界が見えはじめ,AIの分野での情報処理が逐次的な情報処理と適合しないのではないかという疑問が生じたためである。現在の汎用計算機やその延長上の並列処理では対応できない問題があり,新しい計算モデルが求められるようになった。そして,1980年代半ばにさまざまなニューロモデルが提唱され,新しいアルゴリズムが提唱された。このようにニューロコンピュータの新しい応用分野が開かれ,またその有効性も示されたことによってニューロコンピュータが再び脚光を浴びることになったのである。
ニューロコンピュータにはパターン認識機械のようにユーザが教師となって入力パターンと出力パターンの対応関係を学習させ,システムはノード結合の重みの変更などの形で学習成果を蓄積し自己組織化する学習機械としての応用と,解こうとする問題をエネルギー関数最小化の形に定式化し,システムはエネルギーを最小化するように動作して平衡点が一つの解を与える最適化機械としての応用が考えられている。
おわりに
コンピュータは数値計算を高速に行うことを目的に開発され,現在でも数値計算に広く使用されている。しかし,ノイマン型のプログラム内蔵方式のコンピュータは柔軟性があるため,現在ではコンピュータの役割は数値計算だけでなく,むしろそれ以外の応用の方がはるかに多い。
一方前述のように使用目的に応じた各種の専用コンピュータが開発されており,第5世代コンピュータのプロジェクトでは人工知能を主な対象として開発されているし,ニューロコンピュータはパターン認識に適している。
このようにみるとコンピュータはその用途に応じて処理の仕方や構造が異なったものになるべきだという考え方が出てくる。このような見方をすれば,現在はコンピュータの概念が大きく変りつつある時代であるともいえよう。動作原理も電気的なものだけでなく,もっと広い自然現象が応用可能で,たとえば,光コンピュータ,バイオコンピュータなども研究対象として考えられている。
コンピュータの分野ではこのようなさまざまな考え方が交錯して,数々の新しい研究が活発に進められており,将来の発展が楽しみである。