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| ACCUMU Vol.4 1992 |
| 生命の科学 |
近藤 宗平SOHEI KONDO
近畿大学原子力研究所教授
大阪大学名誉教授
理学博士
これは,ノーベル物理学賞を受賞したE・シュレーディンガーの名著の表題でもある。この本は,第二次世界大戦中の1943年,亡命先アイルランドのトリニティ大学での連続講演を基に書かれた。この本は,生命の根元を解き明かした分子生物学の誕生に,大きな貢献をした。地球上の生物は,バクテリアからヒトまで,すべてが親類である。これは,分子生物学によって証明された法則で,20世紀の最大の発見である。
生命の原理は,大腸菌などの微生物で,徹底的に研究され,ヒトへも適用されることがわかった。しかし,原理がわかっただけでは,生命の問題は解決しない。例えば,生物はどのように生きてきたか,生物進化の歴史を新しい視点から考えることが求められている。
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| 図1.早春のあけぼの杉。近畿大学原子力研究所敷地内。3本目のあけぼの杉は1991年の豆台風で上半が折れた |
曙杉は中国の奥地以外ではなぜ死滅したのだろうか? この疑問の答を探す方法の一つは,植物の進化の歴史を調べてみることである。図2は,化石に基づいて,植物が地上に現れた順を示す。約4億年前に,海から陸に進出した元祖植物は,急速に陸地生活に適応して,大型の方向へ進化し,やがて20mを超す巨大植物が現れ,古生代大陸の各地で繁茂した。しかし,巨大植物の繁茂は永続しなかった。古生代大陸に環境の激変が起こって,大半の巨大植物は死滅し,その遺骸の一部は,炭化し石炭層となった。
古生代末期になると,裸子植物が出現し,中生代になると,古生代植物を追い越して,大いに繁茂した。
中生代の末期になると,被子植物(花植物)が出現し,ゆっくりと仲間を増やし,新生代に入ると,裸子植物を追い越して,1年生被子植物が爆発的に進化して繁栄し,今日に及んでいる。
曙杉は裸子植物に属する。従って,新生代に入ると,曙杉は1年生被子植物との生存競争に負けて,次第に繁茂地が減って,約100万年前になると,中国奥地以外では全滅したものと思われる。
プログラムされた死
−子孫繁栄のための自爆遺伝子の働き−
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| 図2.化石に基づく植物の進化の系統樹 |
動物進化の法則
−哺乳類の反則−
動植物で一番種類が多いのは昆虫である。昆虫は,おもに古生代に陸上植物が繁茂した直後に,大進化をした。昆虫で種類が多いのは,小型のものである。従って,これは,早熟・早産による繁殖力向上を意味し,適応的進化の法則に合致している。では,人類の先祖である脊椎動物の進化はどうであったか。長い歴史を簡単化して言えば,中生代は恐竜の黄金時代であり,恐竜は小型から大型へ大進化をした。これは,古生代に大型植物の進化が頂点に達した現象に対応すると思われる。しかし,中生代末に,地球環境激変に適応できなくて,恐竜は突然全滅した。古代巨大植物の絶滅とよく似ている。
恐竜がいなくなった大陸の各地の空地に向かって,原始哺乳類が進行し,融通性に富んだものがそれぞれの新環境に適応し,長い時間のあとに,多種多様な哺乳類に進化した。
ヒトは進化の最後に現れた。図3に霊長類の進化の様子を示す。原始哺乳類は現在のネズミくらいであったと推定されている。従って,図3の霊長類の例からわかるように,哺乳類は,「進化は大型から小型へ」という法則に反して,小型から大型へ進化した。これは,哺乳類は機敏に動き回ることができるので,長い期間には,生存力と繁殖力を,環境に適するほうへ徐々に向上したものが現れ,それが同族繁殖したからであると思われる。しかし,適応向上型の突然変異がどうやって起こったか,全くわかっていない。他方,ヒト個体を構成する細胞には,多種多様な自爆遺伝子が存在することがわかってきた。これらの自爆遺伝子は,ヒトの長寿(図3)の要因に大きく寄与していると思われる。
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| 図3.霊長類の進化の系統樹と寿命(太字)近藤宗平著『人は放射線になぜ弱いか』より講談社の許可を得て転写 |
人類は,ついに,科学を知り,技術を磨き,20世紀文明をつくった。その結果,人間の数と欲望が急増し,地球環境を急速に破壊し始めた。21世紀の地球の生態系はどうなるのだろうか? 科学とコンピュータ技術の進歩によって,環境破壊の予測精度が向上し,人間が自己の繁殖と欲望を自制できる日がくることを祈っている。
太陽の光は,
生命の源である。
ヒトは太陽を神とあがめ,
古代文明を築いた。
やがて,科学をしり,
20世紀文明をつくった。
文明享楽の日は,
やがて終わる。
天変の兆しは,
地球環境の危機を予測する。
予言する科学を,
ヒトは信じようとしない。
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Revised:jJune 30,1999
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