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Accumu Vol.13

日本最初にして唯一のIT専門職大学院 京都情報大学院大学 開学

IT革命の進行。ユビキタス社会の現出。社会のパラダイムは変わり,変革を推進するリーダーの育成が,求められている。日本における情報教育のパイオニアとして,40年以上にわたり,情報教育のスタンダードを築き,社会の求める人材育成を行ってきたkcg.eduが,IT分野のリーダー育成という課題を果たすべく,新たな歴史のページを開いた。


学校教育法の改正に伴い,2003年4月に専門職大学院制度が施行された。専門職大学院は,従来の研究大学院と異なり,「高度専門職業人」の育成を目的とする大学院である。

京都コンピュータ学院は,長年にわたって,多くの四年制大学卒業者を入学者として受け入れてきた。そうした大卒者の多くは,実務に直結した高等教育機関を探した結果として本学院を選択していた。京都コンピュータ学院は専修学校であるが,社会的には大学学部卒業者のための教育機関として,すなわち一種のグラデュエイトスクール(大学院)として機能してきたことは疑いのない事実である。また,本学院は1998年以降,米国のロチェスター工科大学(RIT)大学院IT学科等への編入を目指すコースを開設し,実学志向のプロフェッショナルスクールとして,修士課程カリキュラムを実施している。こうした実績のある本学院が,IT専門職大学院設置に乗り出すことは必然であった。

株式会社堀場製作所堀場雅夫会長他多数の財界関係者,米国ロチェスター工科大学,コロンビア大学教育大学院の教授陣など多くの教育関係者の賛同を得て,大学院設置準備委員会を設け,申請書類の作成を本格的に開始することとなった。

大学院設置準備委員会の実務担当の多くは20代の女性教職員であり,全員にとって大学設置は初めての経験であった。連日の奮闘により,600ページにわたる申請書類が完成したのは,2003年6月27日の未明のことであった。奇しくもこの日は,学院創立者故長谷川繁雄初代学院長を偲ぶ閑堂忌の当日であった。初代学院長は,大学を設置するというビジョンを持ち,その実現を夢見ておられた。

専門職大学院制度施行後初めての申請が6月30日に締め切られ,平成16年度開設予定の専門職大学院が公表されると,申請されたIT専門家育成のための専門職大学院は「京都情報大学院大学」のみであることが判明した。多くの大学が情報系の専門職大学院開設を目指すと考えていたゆえに,我々にとってこのことは大きな驚きであった。本学開学が,IT分野の実務家育成という社会的課題に対する,日本の高等教育界としては初の挑戦であり,大きな意義を有することが確認された。

最初に提出した申請書類に対しては,大学設置審議会より手厳しい意見が突き付けられた。特にカリキュラムに関しては,「ビジネスの要素が全くない」として,経営系の科目が少ないことが取り沙汰された。元来カリキュラムについては,ACMやAISなどの米国の情報系学会が策定したIT系のプロフェッショナルスクールの修士課程カリキュラムに準拠しているが,わが国における人材育成のニーズを考え,日本の状況により適合させるため,経営系科目を増やすべきであると学内でも方針を決定し,経営・経済系科目の増加を図った。

さらに2003年10月2日に,大学設置審議会の審査委員の先生方(法政大学清成忠男総長,東京工業大学中嶋正之教授)が来校され,大学院実地調査が行われた。その際に審査委員からは,専修学校が専門職大学院を設置することに対する懸念が述べられた。それに対し,本学からは,京都コンピュータ学院の教育実績や,IT人材育成の課題に日本の大学が充分対応できず,申請が本学のみであったことこそが問題の本質である旨を申しあげた。審査委員からは,「日本最初のIT分野の専門職大学院となるわけだが,今後類似の大学院設置が予想され,この大学がスタンダードとなるので,充分にその点は理解してほしい」旨が伝えられた。この実地調査においていくつかの意見が出され,教員・カリキュラムなどに関する法的な要件は全て満たす万全の対応を直ちに行い,1400ページに及ぶ補正申請書類を10月10日に提出した。

しかし,11月21日,補正申請書類に対する審査結果が発表され,「認可保留」という決定が為された。保留理由は,カリキュラムが体系的・段階的でないなど,研究大学院と異なる専門職大学院の特質を充分に理解していない,誤解に基づくとしか考えられないものであった。事実,審議会の委員の中には,プロフェッショナルスクールの出身者も,教育行政の専門家もいなかった。そこで,さらなる理解を求めるために,全ての指摘点一つ一つについて丁寧に説明を行い,500ページに及ぶ再補正申請書類を作成し,12月10日に提出した。

全てのやるべきことは為し,大学開学の機は熟していたため,2003年12月24日,申請に携わった関係者が集まり,京都情報大学院大学開学に向けての不退転の決意を再確認し合った。私学において重要なのは,あらゆることを自分たちで決定し,責任を持って実行するという自立の精神である。

年が明け,2004年1月23日,大学設置審議会が開かれ,その席上において,京都情報大学院大学認可の答申が出された。1月30日,文部科学省において認可証が交付され,法的な意味においても,日本最初にして唯一のIT専門職大学院「京都情報大学院大学」は誕生した。