Accumu おかえり「はやぶさ君」~奇跡の生還

経緯

「はやぶさ」(科学衛星MUSES-C)帰還までの経緯

はやぶさ
  • 1985 年ごろ 小惑星探査機の計画が浮上,ミッションへの議論開始
  • 1996 年 宇宙工学委員会がミッションを承認,探査機の開発を開始。当時は小惑星「ネレウス」でのミッションを計画していた
  • 2000 年2月10 日 M-V ロケット4号機の打ち上げが失敗。次期打ち上げも延期され,ターゲットは「イトカワ」(命名は5号機打ち上げ後の2003 年8月)に変更
  • 2003 年5月9日 鹿児島宇宙空間観測所(内之浦)よりM-V ロケット5号機にて打ち上げ,成功。ターゲットマーカには88 万人分の署名が刻まれた
  • 2004 年5月19 日 イオンエンジンを併用した地球スイングバイ(地球の重力を利用しての加速)に成功。その後, 「イトカワ」へと向かう
  • 2005 年7月29 日 「イトカワ」の撮影に初めて成功
  • 2005 年11 月12 日「MINERVA」を落としたが,失敗
  • 2005 年11 月20 日 「イトカワ」に着陸,タッチダウン。先にターゲットマーカも着陸。弾丸は発射されず。約30 分後,離陸
  • 2005 年11 月26 日 2度目のタッチダウン。1秒後に離陸し「イトカワ」を周回。だがその後,科学エンジンの推進剤漏れが発生。通信が途絶。その後再び推進剤漏れも
  • 2006 年1月26 日 通信が回復。その後,約1 年をかけて電池の充電など帰還の準備。当初計画の2007 年帰還は,その3年後に延期となった
  • 2007 年1月17 日 「イトカワ」での採取物をカプセルに。ふたを閉め,成功
  • 2007 年4月25 日「イトカワ」の周回を終え,地球に向け出発
  • 2010 年6月2日 オーストラリア政府が同国内ウーメラ立入制限区域へのカプセル落下を許可
  • 2010 年6月13 日 カプセルの切り離し成功(19:51),ウーメラに着陸。「はやぶさ」本体は大気圏に突入(22:51)し,燃え尽きる。地上でカプセルを目視で発見(23:56)。
  • 2010 年6月14 日 カプセルを回収,18 日未明にはJAXA 相模原キャンパスに到着
  • 2010 年6月24 日 カプセルの開封作業開始,その後,内部を調べる
  • 2010 年11 月16 日 サンプル容器から回収された岩石質の微粒子のほぼすべてが,地球外物質であり, 「はやぶさ」が「イトカワ」から持ち帰ったものだったと,JAXA が発表

「はやぶさ」機体データ

  • 質量:約510Kg 
  • 大きさ:約1m×約1.6m×約2m 太陽電池パドルの端から端まで約5.7m 
  • 主要ミッション機器:レーザー高度計,近赤外線分光器,蛍光X線スペクトロメータ,広角カメラ(2台),望遠カメラ等 
  • 小惑星接近用の目標としてのターゲットマーカ 
  • 小惑星サンプル回収用のサンプラーホーンおよび再突入カプセル 
  • 小型ローバ「MINERVA」 
  • キセノンを用いたマイクロ波イオン電気推進装置(主エンジン) 
  • 約88万人の名前を刻んだアルミプレートを備える(ターゲットマーカ上)JAXAホームページより http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/hayabusa/

「はやぶさ」が経験した主な困難と解決策

  • タッチダウンの前(2005年8~ 10月),姿勢を制御する装置(リアクションホイール)が相次いで故障→ある程度想定されていたこと。化学エンジンを使って制御可能に。
  • 2回目のタッチダウンの後(2005年11月)に,燃料漏れと通信が途絶えた→通信ができないと,地球からの命令が出せない。ただただ待つしかなかったが,7週間後に奇跡的に復活した。
  • 化学エンジンが使用不能に。バッテリーの故障も(2006年1月)→化学エンジン故障により姿勢制御ができなくなった。稼働していた唯一のリアクションホイールとキセノンガスの噴射,太陽光の圧力で克服。バッテリーはカプセルのふたを閉めるときに必要。半年ほどかけてじっくり充電したら,ようやく回復した。
  • イオンエンジン劣化で非常停止(2009 年11 月)→メンバーはミッション失敗も覚悟したが,スタッフの1人がイオンエンジンに裏技的な回路を仕組んでいて,2台のエンジンを組み合わせることによって復活した。このスタッフはこのような最悪な事態も想定していた。