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Accumu Vol.2

第1回ボストン研修のはじまり -オープニングセレモニー

金澤 千穂

昨年の6月2日,国際情報処理科1期生13名と,担当の先生,日本旅行の三間さん(新宿支店支店長)と私の16名は,大阪空港から,アメリカはボストンヘと旅立ちました。第1回目の,ボストン研修のはじまりです。ボストンは,アメリカ大陸の東側,つまり東海岸に位置します。ハーバード大学,マサチューセッツエ科大学(MIT)に代表される,世界でも有数の大学が集中している,文化・学術都市で,京都市の姉妹都市でもあります。さて,そのボストンでの,国際情報処理科の研修の開幕は…。

初日から数えて,5日後の6月7日は,朝からあいにくの雨でした。その日は,国際情報処理科のボストン研修の開幕を記念して,オープニングセレモニーが開かれました。会場は,ボストン校本部棟。閑静な住宅街にある,3階建ての素敵な建物です。

私は当日,受付で来賓の方々に御名前を記入していただくという係をしておりました。私の居た受付は,本部棟の大きな扉のある玄関の内側で,その扉と受付用テーブルの間には,2メートル四方ぐらいのスペースがありました。受付開始30分前,つまり4時30分には,その2メートル四方のスペースには,人があふれんばかりに集まっていました。アメリカでのセレモニーですから,勿論アメリカ人でいっぱいです。その中に,アジア人(日本人?)の顔もチラホラ。壁際に,NHKの取材班の方々が,忙しそうにカメラをまわしておられました。彼らは,そのセレモニーの数日前から,ロサンジェルスのNHK支部より来られ,学生達の授業風景や,寮の生活風景の撮影の為に,ボストンに滞在されていたのです。カメラマン達は,受付の様子をカメラに収めているところでした。私も忙しく来賓名簿VIP名簿に目を通したり,他の雑務におわれていて,不手際がないようにしなければと,多少緊張していました。その為,カメラを向けられても,テレている暇もなかったのですが,やけにまぶしかった事を覚えています。その慌ただしい所に,先生率いる13人の学生達が,キッチリと正装してやってきました。先生は,その日も午前中はピッチリ3時間の授業を終えられてから,ザーザー降りの雨の中,学生達と来られたのです。知らない人達を目の前にしながら,まぶしすぎる光の中,キリキリ舞いしていた私は,学生や先生の顔を見つけ,何やらホッとしたのでした。

さて5時です。受付開始。先生をはじめ,アメリカ人学生のリサ,私の3人で受付を済ませ,80人程のお客様をお通ししました。その中には,学生も,本校情報科学研究所長の上野季夫先生や,ボストン校校長の松島訓先生も含まれています。主催は,長谷川靖子学院長です。VIPリストに御芳名の載っていた方は,ほぼみなさん来られていました。あらためて,そのリストに目を通すと,NASAのアービング氏や,NECのアメリカ支社長の御名前,MITの教授陣等。その時,あらためて,長谷川靖子学院長の交友関係の広さを実感致しました。

受付も,どうにかこうにか終わり,セレモニーにかけつけた方々は,玄関ホールを入ってすぐ左横のリビングルームヘと流れていきました。そこには,舞台のようにグランドピアノがセッティングされ,それを観る形で椅子がずらりと並べられてあります。サイドテーブルには,美しく飾られた花瓶が置かれ,壁紙の紺色にマッチしていて,とても豪華に見えました。

5時半。セレモニーの始まりを告げる松島先生のアナウンス。その時私は,まだ受付で,来賓ノートの整理をしていて,その部屋には入っていませんでした。松島先生はそのアナウンスで,学院の誕生から本日に至る過程の説明と,ボストン研修の意義を話されました。次に学院長の式辞があり,ボストン校開設の主旨と,教育的意義について,話されました。そしてその後,主催者側から紹介がはじまり,スタッフ・来賓の方々の順で流れていきました。スタッフ紹介の際,受付(裏手)で片付けをゴソゴソしていた私は,急に名前を呼ばれ,かなり慌ててみなさんの前に立つことになりました。「ワッ,まぶしい!」例のNHK取材班のカメラです。目が慣れ,座っている人の顔が段々と見えてきました。

そこには,いわゆる蒼い目をした金髪の人達,黒い瞳に黒髪のアジアの顔が混ざりあって座っているのです。そして,客席の中央の2列に,少し不安気にしかもキッチリと座っている学生達。「今日は,新入社員もどきで,キメている…。」と,何だかとても可愛いらしく見えました。会場のあらゆる所で飛びかう英語の中,正装してフォーマルセレモニーに出て,緊張しているみたいでした。リラックス!リラックス!と言ってあげたいけど,遠く離れていたので微笑むだけしかできませんでした。通じたでしょうか。

全員の紹介が終わり,セレモニーはバイオリン演奏会へと移ってゆきました。本校の音楽会では,いつも演奏して下さるバイオリニストの浦川先生です。直接お話したわけでないから正確ではないのですが,浦川先生は,日本から来られボストン空港に到着されたばかりでの演奏だったと思います。ピアノ演奏は,池宮氏。譜面めくりは,松島先生の奥さまの玲子さん。

その日は,朝からかなりの雨量で,バイオリンとピアノの音の駆けっこは,雨音も加わり,ツヤがあり聞く人の耳にとても優しかったのです。会場の後方のドアからそっとのぞいてみると,学生のA君ときたら,先程までのパリッとした緊張とはとうにサヨナラし,コックリコックリしているのです。「あらまあ。」と思いつつも,予習復習とレポートに追われる毎日の過密スケジュールを考えると,仕方もないかなとも思いました。

演奏が終わり,振り袖姿の長谷川由さんより,「食事の用意があちらの部屋にしてあります。ご自由に召し上って下さい。」という一声により,一同食堂の方へ流れて行きました。各地で「Cheer us!」(乾杯)という声が聞かれ,セレモニー会場は,一気に盛り上った雰囲気となりました。食事を共にするということは,どんな人にとっても気がなごむ一時なのでしょう。

お皿をもって,各々のテーブルをまわっている学生達も,色々な方々とお話している様でした。特に女子学生は,度胸があるというのか,基本的に強いというのか,どんな方にもニコニコ笑いながら,何とか英語で話をしているのでした。彼女達に近づいてみると,「先生,食べてる?あそこのテーブルの料理,おいしいヨ。」と,食がすすんでいる様子。男の子達に目を向けますと,仲間内の話がはずんでいる様子。乾杯のシャンパンに頬を赤く染めている子もいました。「先生,オレ外人さんに話しかけられてビビったわ。」と言うので,ここはアメリカで,外人さんは私達の方だと笑ったものでした。

どこの国の言語を喋ろうと,どんな色の目をしていようと,基本的に人間はみんな同じだというのが,私の頭の中には常にあります。とはいえ,学生達の驚きも不安もよくわかります。こんなフォーマルセレモニーで,しかも,異国の地で著名な方々が多く来られている場。彼らも,興奮とも緊張ともいえない心境だったことでしょう。私は,良い経験だからガンバレと思いつつ眺めていました。

セレモニーも終盤にさしかかり,まだ残っておられる方々と参加者の記念撮影がありました。それは,何度も何度も撮り直し。その度に,席替えをして,おもしろかったのです。さっきまで,セレモニー会場で見た見知らぬ人同志だったのが,となりに並び,自然と言葉をかわす。人と人とのふれあい・出会いを非常に重んじる私には,楽しい一場面でした。

セレモニーの締めくくりに,長谷川先生より,学生達に激励のお言葉。みんなで円陣を組み,長谷川先生を囲む。「君らはこの国際情報処理科の1期生だ。つまり創始者の一員。この国際科の将来を担っているんだから,その事を肝に銘じてこの研修に臨んでくれ。」と言われました。その時,みんなは日本を離れてから6日目でした。ボストン到着以来の過密スケジュールに疲れた様子でした。特にNHKの取材で,多少動揺していた様子。そんな彼らへの励ましの言葉だったのです。みんな心して聞いているみたいでした。

さて,あれからほぼ1年が経過しようとしています。つまり,2回目のボストン研修に旅立とうとする段になり,昨年のオープニングセレモニーの事について書く機会にふれ,大変懐かしく思い起こしております。陳腐な表現ですが,昨日のようでもあり,大昔のことのようでもあります。今年のボストン研修も,去年の如く何事も無く終わりたいものです。今はそれを願いつつ,毎日準備におわれております。