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Accumu Vol.20

長谷川利治先生 追悼

偲ぶ会を開催

お好きだったクラシック・集いでお人柄を偲ぶ



 追悼コンサートで演奏するグレブ・ニキティンさんと
 杉谷昭子さん

 長谷川利治先生の業績を紹介する茨木学長

京都情報大学院大学の第2代学長を務められた長谷川利治先生が2011年11月28日,永眠された。心よりご冥福をお祈りいたします。KCGI,KCGによる長谷川利治先生のご功績をたたえる「偲ぶ会」が2012年1月28日,KCG京都駅前校6階ホールでしめやかに開催され,多くの出席者が先生をお送りした。

第1部は,クラシックファンであられた長谷川利治先生にささげる追悼コンサートで一般の方にも開放。冒頭,長谷川亘KCG・KCGI統括理事長が「長谷川利治先生は本学にとって本当に偉大な先生でした。一層の発展をご霊前に誓いたいと思います」とあいさつした。

続いて,本学にゆかりの深いピアニストの杉谷昭子さんがアレッサンドロ・スカルラッティの「ホ長調 KK380」,モーツァルトの「ソナタ イ短調K310」,「ロンド イ短調K511」など,長谷川利治先生の愛した曲を演奏。また,ヴァイオリニストのグレブ・ニキティンさんとベートーヴェンの「ヴァイオリンソナタ第5番ヘ長調 『春』」,サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」などの名曲を合奏し,会場を埋めた長谷川利治先生ゆかりの方々やKCG,KCGIの学生らの感動を誘っていた。

第2部では長谷川利治先生の薫陶を受けた3人の講師が先生の業績について紹介。KCGIの茨木俊秀学長は,先生の控えめで寛容な人柄を語り,また先生の学問的業績は主に通信工学の分野で非同期時分別多重方式を提唱したことと,高速道路における道路交通制御にかかわったことを紹介した。続いて京都大学大学院の高橋豊教授が通信工学の分野,南山大学の河野浩之教授が道路交通制御の分野の先生の業績について解説した。

第3部では6階ホール前のホワイエに場所を移し,ゆかりの方々100人以上の参加による「偲ぶ集い」が催された。長谷川利治先生に学んだKCGIの高弘昇教授の司会で,長谷川亘統括理事長と茨木学長のあいさつ,自由懇談の時間に続いて,大阪大学の西尾章治郎教授ら先生に薫陶を受けた7人の方々が先生の思い出を語った。「先生がいらっしゃらなければ私の今日はなかった」(岳五一 甲南大学教授),「『常に役立つこと,いつまでも役立つこと』を学生に教えるべき,とのお言葉が心に残っている」(伏見正則 南山大学教授・東京大学名誉教授)など,先生のお人柄をしのばせるお話に会場は温かい感動に包まれた。

最後に遺族を代表して次女の磯兼有水子さんが「父は本当にクラシックが好きで,家で口ずさんでいた曲を演奏していただき,胸が熱くなりました。父は学生と触れ合うことが好きで,いつも自分の教え子の話を楽しそうにしていました。父の温和な人柄の故あって,今日みなさまとお会いできたことをうれしく思っております」とあいさつされた。

多くの方々を教え励まし,学問と人材育成に大きな足跡を遺された長谷川利治先生。ゆかりの方々はいつまでも先生の思い出を語り合っていた。

長谷川 利治 先生 追悼文


 通信工学の分野の業績を紹介する京都大学大学院の
 高橋教授

 「偲ぶ集い」であいさつする長谷川亘統括理事長

 「偲ぶ集い」の懇談風景

京都情報大学院大学第2代学長で, オペレーションズリサーチ研究の世界的権威として知られる, 長谷川利治(はせがわ・としはる)先生=京都大学および南山大学名誉教授=は, 2011年11月28日逝去されました。 77歳でした。 オペレーションズリサーチ分野のみならず, 通信方式,システム工学,道路交通制御分野などにおいて幅広い貢献をされたほか, 本学に対しては, 学長に就任される以前から長年にわたってその創設と教育の展開に多大なるご寄与をいただきました。ここに謹んで哀悼の意を表します。

長谷川利治先生は, 大阪大学工学部卒, 同大学院修士, ジョンズ・ホプキンズ大学大学院修士, 工学博士(大阪大学), 京都大学工学部教授, 同大学院教授, 同大学情報処理教育センター長, 同大学大型計算機センター長, 南山大学教授, 同大学数理情報学部学部長などを経て, 2008年4月から2010年3月まで京都情報大学院大学学長を務められました。 この間, 日本オペレーションズリサーチ学会会長, 国際オペレーショナルリサーチ学会連盟(IFORS)副会長, 情報システム学会日本支部(NAIS)支部長などの要職も歴任しておられます。

研究活動の初期にテーマとされた通信工学の分野においては, 世界に先駆け, 非同期時分割多重方式によるマルティメディア通信方式をすでに1960年代前半に提案されています。後にインターネットに用いられた方式の原型というべき研究です。 京都大学に移られてからは, オペレーションズリサーチ分野に研究領域を広げられ, 待ち行列理論やシステムダイナミクスなどの研究を始めとして, それらの応用分野として道路交通制御の現実にも関わり,新交通システムや高速道路制御などの領域において実用的な業績を残されました。 これらの研究発表の場として多くの国際会議に出席し外国研究者と親しく交流された結果, 国際的に高い知名度を得ておられたこともよく知られています。

先生が在任された大阪大学, 京都大学, 南山大学, 京都情報大学院大学において, 先生のご薫陶を受けて巣立った教え子たちは, 優に300名を超えるでしょう。さらに,研究や実務を通して先生に接することができた多くの方々を含め, 皆等しく, 先生の時代の先を読む見識の深さに敬服するとともに, すべての人を分け隔てなく受け入れる控え目で寛容なお人柄に大きな感銘を受けてきました。 先生のこれまでのご貢献に対し衷心よりお礼申しあげるとともに, 安らかなご永眠をお祈りいたします。

京都情報大学院大学 学長 茨木俊秀 教授 内藤昭三 教授 高弘昇