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摩天楼オペラ 彩雨式 情報化社会と音楽について

摩天楼オペラ
彩雨さん

2013年4月14日

音楽とITについて語る人気バンド「摩天楼オペラ」の彩雨さん
音楽とITについて語る人気バンド「摩天楼オペラ」の彩雨さん

トークライブ「私とIT」シリーズの第一弾として,2013年4月14日,若者らに人気のヴィジュアル系バンド「摩天楼オペラ」のキーボーディスト・彩雨(あやめ)さんを招き,「摩天楼オペラ彩雨式 情報化社会と音楽について」というタイトルで,自身の音楽活動とコンピュータ,ITの関係について語っていただいた。

中・高校生や社会人など彩雨さんのファンが大勢詰めかけ,彩雨さんの音楽活動におけるITの役割について耳を傾けた。

彩雨さんは,父親が音響機器に関するエンジニアだった関係で,自宅に様々な機材があったという。そのような環境も手伝って中学生時代にDTM(デスクトップ・ミュージック)を始め,さらには持っているCDをデータベース化し,検索できるシステムを作った。慶應義塾大学環境情報学部(SFC)在学中には情報関連についても学び,このころにバンドを結成して音楽活動を始めた。その後,ITを活用した音楽活動で人気を博し,現在に至っている。彩雨さんはトークの中で,KCGグループの学生に対し「学校で学ぶのは技術ではありません。技術や知識は自分で学び身につけるものです」と強調し,「学校で先生から教わるのは,知識をどう使うのか。知識を知恵にする方法を教えてもらうのです。パソコンが1台あれば,誰でも変革が起こせます。大ヒットのヒントは,ふとしたところに眠っているので,学生の皆さんは,面白い発想で,斜め上から世の中を切り取って,変革をもたらしてください」とメッセージを送った。

主な発言内容は次のとおり。

音楽よりパソコンへの興味が先

「父親を3歳のときに亡くし,以降,母との2人暮らしでした。小学生のころからパソコンを触るのが好きで,中学生になるとけっこう使っていました。音楽よりパソコンに興味を持った方が先でしたね。ちなみにキーボード演奏は中学生のころから始めました」

コンピュータが勉強したくて
慶應SFCへ

「慶應義塾大学に進学したのも,コンピュータが勉強したかったから。でもIT関連だけでなく,認知科学や経済学,西洋美術,社会学など,いろいろなジャンルにのめり込みました。大学4年生のときは民俗学とスポーツの関係を研究したりもしました」

あこがれは小室哲哉

「中学生時代は,小室哲哉さんにあこがれていました。コンピュータを駆使し,シンセサイザーを演奏する姿はカッコよかった。当時は自分が作った曲を十数キロバイトのMIDIデータにしてホームページにアップロードしていました」

プログラミング

「プログラミングの作業が大好きなんです。何か自分で世界を作っているような気がして。神様になった気分ですね。ただ,技術力に関してはいまひとつだったと思います。世の中にはプログラミングが上手な人はたくさんいます。私が1000行かけて作るものを,20行足らずで仕上げてしまう,スゴい方もいらっしゃいます」

音楽も学問も
たどり着く結論は同じ

「音楽を仕事にしようと思ったのは,大学生のころ。それまで音楽に興味は持っていましたが,学問の道に進もうと考えていました。それがだんだん,学問と音楽の世界が非常に似ていると感じ始めました。世の中の真理を追究する。やっていることは同じなんですよね」

「摩天楼オペラ」は意外とアナログ

「私のバンドは意外とアナログなんですよ。誰かが曲の骨組みを持ってきたら,まずボーカルがギターを弾きながら歌います。そしてみんなでホワイトボードにコード進行などを書き込んでいく。サビ,イントロと構成していって,一斉に演奏してみます。そこにはITというものは全く存在していません。パソコンで作る曲というのも無いわけではありませんが。ホワイトボードに書き込んだ後は,そのボードの写真を撮り,音はiPhoneで録音してクラウドに載せます。メンバーがそれぞれの自宅でダウンロードし,データを共有するのです」

多様性のある音楽活動を

「2000年,2010年と時を経るにつれ,専門領域を複数持つアーティストが出てきたことが特徴的だと言えますね。音楽も多様化の時代を迎えています。私の場合は,経済と音楽,西洋文化と音楽など,いろいろなことを勉強して,音楽とつなげる活動をしていきたいと考えています」

求められる発想力,応用力

「学校で学ぶのは技術ではありません。技術や知識は自分で学び身につけるものです。ITは進化を続け,新しいものがどんどん出てきています。なので,教えられないと覚えられない人は,今はいいですが,就職できたとしても時代についていけず取り残されてしまうでしょう。繰り返しますが,技術は自分で学ぶという癖をつけてください。それでは,なぜ学校に来るのか。先生から教わるのは,知識をどう使うのか,ということです。応用ですね。知識を知恵にする方法を教えてもらうのです。極論ですが,プログラミングは子どもでもできます。それで何をするのかが大事。発想力,応用力が求められるのです」

失敗を恐れずチャレンジを

「学生が3ヵ月ほどかけて作って公開したソフトが誰にもダウンロードしてもらえず,つまり大失敗であっても誰も損はしませんよね。失敗を恐れずチャレンジできる,それが学生の強みです。これが社会人だったら大変。会社に大損害を与えてしまいます」

典型的なケータイ依存症

「実は私,典型的なネット・ケータイ依存症で,これは公言していることですが,3分間ネットがつながらなかったら死んでしまうかも,というほどです。飛行機に乗ったときなどは,着陸まで不安でしかたがありません」

隠れているポテンシャル

「母は発売されたばかりのカメラ付き携帯電話を買いました。当時は『こんなカメラ,使うわけない』という感想が支配的でした。その後,今度はTV付き携帯電話が登場し,私が買いました。『TVをポケットの中に入れられる』と私自身はうれしかったのですが,周囲の人は『見るわけない』と,にべもありませんでした。でも今は大違い。役に立たなそうな製品に,意外とイノベーションを起こすポテンシャルが隠れていることがあるんですよ」

大失敗談

「あるとき,レコーディング中に完成した曲のデータを誤ってパソコンのゴミ箱に入れ,消去してしまいました。全くの私のミス,ヒューマンエラーでした。『元に戻らない!』最悪の結果が分かったとき,顔面蒼白になって冷や汗が流れ落ちました。その後,眠らず急いで曲を作り直しました。時間が経つと曲を忘れてしまいます。何とか出来上がりましたが,消した後に作ったものの方が良いものになったと思っています,というかそう思うようにしています。それは,たまたま自分の仕事だったからまだよかった。他人のものだったらと考えるとぞっとします。それを教訓に,今は曲を作ったらUSBメモリやクラウドを含め,四重のバックアップをとることにしています」

進むウェアラブル化

「携帯電話は人間の五感の延長。近年はアップル社のiWatchや,Google Glassといったメガネ型コンピュータに代表されるように,ウェアラブル化が進んでいます。今後,より体になじんだものが登場するのではないでしょうか。人間がサイボーグのようになっていきます。それに伴って新しい生活スタイル,考え方がどんどん出てくるのでしょう」