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Accumu 記念行事

これからのものづくり“中小企業の挑戦”

株式会社平安製作所取締役会長
荒木 邦彦氏

2013年7月3日

「日本のものづくりを復活させたい」と語る荒木氏
「日本のものづくりを復活させたい」と語る荒木氏

株式会社平安製作所取締役会長の荒木邦彦氏による講演会「これからのものづくり〝中小企業の挑戦〞」が2013年7月3日,KCG京都駅前校大ホールで開催された。荒木氏は「これからのものづくりはITなしでは立ち行かない。ITを学ぶ皆さんは,日本の産業を担うという気概を持って勉学に励んでいただきたい」と学生に呼びかけた。講演には一般の方も聴講に訪れた。

はじめに荒木氏は,1939年創業の平安製作所について説明。同社は長らく京都市内に工場を構え,独自のプレス加工技術を駆使した自動車関連部品を製造していたが,2003年に本社をマキノ工場(滋賀県高島市)に集約。現在KCG京都駅前校新館が建っている場所は,同社の金型工場跡地だったことも紹介した。

独自のプレス加工技術を用いた製品のうち,「リングギア一体式ドライブプレート」は,オートマチックトランスミッションを搭載している自動車のエンジン始動と動力伝達に用いられる部品で,従来は2部品(プレスプレートと切削歯車)を溶接し組み立てていたもののプレス一体成形化に成功したもの。30%のコスト削減を実現したという。荒木氏は「当社は,人件費削減を求めるためだけの海外への工場移転は絶対にしないと決めていました。工法の改良にITを駆使した技術を加えてしんぼう強く開発を続けた結果,中国など東南アジアで生産されるものよりコストダウンした製品を作り上げることができました」と話した。

日本の産業界については,即席ラーメンや電球ソケットなど,戦後に生まれた未知の分野の技術開発を紹介した上で,「欧米のものづくりにならい,それに新しい発想を加えて独自の技術に発展させ,世界のものづくりのトップに位置していました。しかし残念ながら,コスト面で敗れ,現在の国内空洞化という事態を招いてしまっている」と指摘。「低賃金である中国へ大挙して工場を移転しましたが,中国の賃金もここ3年で60%ほど上がり,効果が薄れてきたため,今度はミャンマーなどへ新天地を求めるというジプシー化が広がっています」とした上で,アベノミクス効果により若干の円安が進んだ現在が,日本でのものづくりを復活させる機会であると強調した。

これからの日本のものづくりおよび技術開発には,数値化して次世代に残すという観点でもITが欠かせないとし,「新技術創出を志したいのであれば,環境や状況を把握しながらITを活用して,あきらめず,しんぼう強く取り組むべき。それが積み重なれば日本の産業は復活します。皆さんにはその先頭に立って頑張っていただきたい」と締めくくった。