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Accumu Vol.10

地球温暖化研究の現状

アメリカ航空宇宙局(NASA)

ゴダード宇宙科学研究所 上級研究員

アンディ・A・レイシス博士 Dr.Andrew A.Lacis

(訳)寺下 陽一 Dr.Yoichi Terashita

京都コンピュータ学院教学部長

アンディ・A・レイシス博士

この論文は1999年12月3日に京都コンピュータ学院でおこなわれたレイシス博士の特別講義の内容を日本語訳したものである。

(日本語で)ミナサンコンニチハ,ワタシハニホンゴガデキナイノデ,テラシタセンセイニツウヤクシテモライマス。

(以下,英語で)

ゴダード宇宙科学研究所では,気候変動についての研究をおこなっています。皆さんは多分,地球温暖化とか,気候変動とか,そしてその結果近い将来に起こるかも知れないさまざまな現象について聞いたことがあるでしょう。皆さんはこの学院でコンピュータの勉強をしておられるということなので,我々のホームページ・アドレスをお報せしておきましょう。www.giss.nasa.gov です。このアドレスを訪問しますと,私が今からお話しすることのもっと詳しい情報を得ることができます。それではいくつかスライドを見て頂きましょう。

図1

図1は過去1世紀の間に記録された温度変化を示しています。右側(b)には地球全体の,そして左側(a)にはアメリカにおいて測定された温度変化です。

図2は,1950年以降の各地域による温度変化の傾向を示しています。これを見て分かるように温度変化は世界各地で一様ではありません。青色で示されるアメリカや日本では温暖化ではなく,寒冷化の傾向が見られるのが実状です。アメリカでは現実に温暖化が起こっていないというこの事実が,おそらくアメリカの政治家が温室効果による地球温暖化をあまり心配していない一つの理由でしょう。一方,シベリア,アラスカ,ヨーロッパ,熱帯地方,特にインドあたりで温暖化が進んでいることが分かります。私達が解明しようとしているのはこれらの変化がなぜ地域によって異なっているかという点です。

図2

今後,温度を言う場合に絶対温度を用いることにします。絶対温度は摂氏の温度に273度を加えたもので,ケルビン(°K)という単位で呼ばれます。熱エネルギーというものは絶対温度に直接比例するので,この温度スケールを用いると種々の現象の理解が容易になります。例えば,人体の温度は摂氏37度ですから273を足して310°Kです。我々に感心があるのは微小な変化です。例えば,この温度における1%の増加は,3.1°Kになります。したがって,体温が1%上昇するとその人の健康は非常に危険な状態になります。2%の体温上昇では6°Kとなるわけで,そうなるとその人は生きることが出来なくなります。

ここで示している地球規模の温度変化は過去50年間で約0.4度,100年間では約0.8度程度のものです。参考のためにもう一つの例を挙げますと,氷河時代(約2万年前)では,現代に比べ気温が5度程度しか低くなかったのです。もし,二酸化炭素やメタンガスのような温室効果ガスの増加を現在のままに放置しておくと,今後の100年間でこれらの気体の量は倍増し,その結果,気温は3.4度上昇するものと予想されます。大気中のCO2含有量は1850年で280ppmだったものが,現在では360ppmに増加しています。CO2に関するこの状況を改変することは極めて困難と考えられます。何故なら,我々の文明はエネルギーに依存しており,自動車を動かすにも,電力を作るにも,すべて石炭,石油,天然ガス,といった化石燃料を燃やすことによって得られるエネルギーを用いています。そして,このような燃料を燃やすと二酸化炭素が発生するわけです。

最近数十年間で急激に増加してきたフロンガスという物質があります。この気体は,エアコン,冷蔵庫,ヘアスプレーなどから放出されるもので,やはり,地球温暖化の原因となるものです。この気体の特徴は成層圏まで上昇し,そこでオゾンを破壊し,いわゆるオゾンホールを作る原因となります。成層圏でオゾンがなくなると太陽からの紫外線がすべて地表に到達し,地球上の全ての生命体を焼き殺すことになるということで,人々は大いに心配するところとなり,この種の物質の製造を中止し,代替物で置き換えることになりました。従って,現在ではフロンガスの増加は基本的には止まっています。

図3

温室効果ガスの他に,太陽周期に伴う太陽エネルギーの変化を考えておく必要がありますが,これは非常に小さく0.1%程度です。温室効果との関連でオゾンへの影響が問題になりますが,太陽周期によるオゾンの変化はそれほど重要なものではありません。それに対し,人間の環境汚染に起因するオゾンの垂直分布の変化が最近,顕著になっています。我々はまた,火山噴火によって成層圏に放出されるエアロゾルに気をつける必要があります。この種のエアロゾルは大気を冷却する効果を持っています。図3には,大規模な火山噴火によるエアロゾルの増加が示されています。黒い実線の一番右側のピークは1991年にフィリッピンで噴火したピナツボ山で,それに加え以前の噴火活動の影響も見ることができます。この図はまた,各種のエアロゾルの量について,時間的にどう変化しているかを示すものです。我々はこれらの観測量を気候モデルに入力し,気候変動を研究するわけです。

図4 図5

エアロゾルの中で最も重要なものは,硫化物および炭素のエアロゾルで,これらはいずれも基本的には化石燃料から放出されるものです。これら2種のエアロゾルは互いに逆の効果をもたらします。一方は大気を冷却する効果を持ち,他方は暖める効果を持ちます。図4は,過去50年間における硫化物エアロゾルと炭素エアロゾルの変化を示しています。

図5は,砂塵の状態です。砂漠地帯で風により吹き上げられたものです。このように,気候モデルから種々の情報を得るには,非常に多種類の入力データが必要で,それらは非常に複雑に絡み合っているのです。

これらの図を見て,種々のグラフィックス出力に注目して下さい。このようにコンピュータ技術がフルに活用されています。我々は,コンピュータ技術の方から多くのサポートを必要としています。モデルに入力すべきデータをどのように表現すべきか,モデルからどのようにデータを取り出し,それを分かり易い形式にするにはどうしたらよいのか,ということに関する技術が重要になります。

温室効果による温度上昇の原理は以下のように述べることができます。地球表面での平均気温は約288°Kありますが,もし大気がないものとするとこの値は255°Kとなります。すなわち大気は“毛布”の役割をし,地表での温度を暖かくしてくれているわけです。この33度という温度差が,自然の状態での大気の温室効果ということができます。この自然状態の大気に炭酸ガスを注入するとどうなるでしょう。“毛布”の厚さが増すことになります。そしてその結果,地表気温が温室効果のため,33℃,34℃になるかも知れず,また35℃になるかも知れないのです。どれだけ上昇するかは,どれだけの炭酸ガスを注入するかによって決まります。

気候が温暖化するといろいろなことが起こります。先ず,水温が高くなるために海水が膨張し,海面が上昇します。また,南極などの氷が溶け出すため海水の量が増え,これがまた,海面上昇の一因となります。海面が上昇した場合,日本にとってはそれほど大きな問題ではないでしょうが,フロリダやバングラデシュといった地域では非常に深刻な問題となるでしょうし,水面下に沈没する島々も出てくるでしょう。海水の温度が上昇するとまた,台風などがより強力に,かつより頻繁に発生するようになります。

図6 図7

図6は,1850年より現在に至るまで,すなわち工業化社会になってからの種々の温室効果ガス,特にCO2,メタン(CH4),NO2の気候に対する影響の重要度を示しています。これらのガスのエネルギー効果は約2.6ワットです。これは一見非常に小さな値ですが,どのぐらいの影響を持つのか考えて見ましょう。

私がいま手に持っているのは1ワットの豆電球です。二酸化炭素が今のままで増加していくと21世紀のいつかの時点でその量は倍増し,温暖化に対する寄与は1平方メートルあたり約4ワットになります。すなわち,1平方メートルあたりこの豆電球が4個ということになります。

我々が受けている太陽エネルギーは,地球全体の平均で1平方メートル約240ワットです。従って,現段階での温室効果ガスの寄与2.6ワットというのは,太陽エネルギーの約1%になります。これを人間の体温での1%の変化と関連付けると,この変化量は人間の健康状態に対して極めて危険な影響を及ぼすものです。しかし,実際には地球はまだそんなに危険な状態になっていません。その理由は,海洋の熱容量が非常に大きいため,2.6ワットという熱効果があるにも関わらず,実際の温暖化が起こるのが遅らされているからです。

図6ではその他,同じ期間におけるオゾン量の変化が示されています。オゾン量(左から2番目)は対流圏(低層大気)では大気汚染により増加し,(左から3番目)成層圏(上層大気)ではフロンガスのせいで減少しています。その隣は大気中のエアロゾルで,これは冷却効果をもっています。エアロゾルはまた,雲の生成に関連し,それがさらに冷却化を促進します。右から2番目が太陽エネルギーによる温暖化で,一番右は火山噴火からの寄与です。1850年以降の温室効果ガスの増加率が図7に示されています。増加の大部分は二酸化炭素(CO2)であり,メタンガス(CH4)もいくらか寄与しています。この赤い部分はフロンガスですが,これは現在ではなくなっています。(ただし,これを減少させた理由は,温暖化への対応というのではなく,オゾン破壊への対処であったという点に留意しておく必要はあるでしょう。)これを見て分かるように二酸化炭素の量を減らすことは極めて困難と思われます。

自動車の動力として,また一般に種々のエネルギー源として燃焼される化石燃料からの温室効果ガスの量はかなり急速に増加しています。だれも皆が車を持ちたがり,まただれもが快適な暖房設備を持ちたがります。そして,その結果としてさらに多量の炭酸ガスが生成され,それが地球温暖化につながるわけです。

数年前に,化石燃料の消費を減少させる,あるいはそれを最小化するための方策を探るための,「京都会議」というものが開催されましたが,政治的な立場から各国間の同意を得るのは非常に難しいことです。しかし,いずれにせよエネルギーを節約することは意味のあることでありましょうし,それによって地球温暖化を和らげることになるのです。

図8

図8の二つのグラフは炭素と硫化物の増加の様子を示したものです。前者は温暖化の原因となり,後者は寒冷化の原因となるもので,温室効果への影響に対して互いに打ち消す効果をもっています。また,異なった種類の物質は(各地域で)異なった分布をしており,それらの時間的変化も様々ですから,温室効果への影響は非常に複雑なものになります。この複雑な効果を計算するために我々が開発したのが「気候モデル」です。この気候モデルにこれらの情報をすべて入力し,その結果,地表温度,降雨量,風や雲の状態,その他あらゆる量を計算します。すなわち,気候をシミュレートするわけです。このような気候のモデル計算をどのようにおこなうか,ということは皆さんも興味を持っておられることと思います。先に話しましたように,我々の気候モデルは非常に複雑なものですが,我々の研究所ではスーパーコンピュータとか並列コンピュータなどは用いず,汎用のワークステーションを用いて計算をおこなっています。コンピュータは以前に比べ急速に性能が向上して来ました。私が現在使っているデスクトップ型のワークステーションは,我々が20年前にこの研究を始めたときに用いていた超大型コンピュータに比べ,速度は10倍,メモリー容量は少なくとも1000倍以上あります。そのころ使っていたコンピュータはIBM360-95という機種で,これは当時アメリカ全土で3台しか存在していなかった最高の性能を持つコンピュータでした。他の2台のうち1台は国防省に,もう1台はロスアラモスの原子力研究所にあるだけだったのです。周辺機器なども含めるとそのマシンは我々の今いるこのホールの半分くらいの面積を占有するほど巨大なものでした。当然のことながらそのコンピュータを使うためには強力な空調設備が必要でした。それを運転するためにどれ程の電力を必要としたか私にも分かりません。このコンピュータを運転するだけで,年間おそらく百万ドル以上の費用がかかっていたと思います。

このコンピュータが御用済となり引き取ってもらう時は,2台の大型トラックが必要でした。現在はそれがデスクトップ型のワークステーションになり,それが10倍速いのです。先に述べたモデル計算をするのに,私はFORTRANでプログラムを開発しています。モデルのプログラムのうち,私が担当している部分の大きさは多分1万2千ステップぐらいです。全体では約20万ステップぐらいになります。我々が,並列計算機能を持つスーパーコンピュータを用いずに汎用コンピュータを用いている理由は,プログラムに頻繁に変更を加えねばならないからです。すなわち,我々は常にプログラム開発をおこなっているからです。このように常に変化しているプログラムをスーパーコンピュータで走らせることは事実上不可能だからです。

我々は気候モデルを学習のための道具として用いています。気候というものがどのような振舞いをするのかを理解するために,モデルを用いて種々の実験をおこないます。例えば,大気中の二酸化炭素の量を正常値の2倍にするとどうなるかということをモデルを用いて計算して見ますと,「エネルギー束変化量」(エネルギー効果)というものが,2倍の二酸化炭素に対して約4ワットとなります。そして大気中の温度がどのように変化するかというと,二酸化炭素を倍増することにより,成層圏では非常に強い冷却効果が,地表では温暖化効果が現れます。この種の計算結果は一種の「玩具モデル」ですが,現実の世界をよく模倣しているものです。この例では,極地部分において温暖化効果が強く,熱帯部分では比較的弱いということが分かりました。

次に,太陽エネルギーを2%増加するとどうなるかモデルを用いて調べてみました。結果として,エネルギー束(エネルギー効果)変化量の大部分が熱帯部分で起こります。それは太陽放射がこの部分で最も強いからです。太陽エネルギーを増加した場合,成層圏の温度にはあまり変化がなく,地表において若干の温度上昇が見られます。地球全体を見ると,前と同じように極地部分での温暖化が顕著であり,熱帯部分ではそれほどではありません。

ここで留意して頂きたいのは,入力エネルギーの増加を伴う太陽エネルギーと,温室効果を伴う二酸化炭素という,非常に性格の異なるエネルギー効果を与えても似たような温暖化が起こるということです。気候モデルの一般的な振る舞いとして,地球全体にエネルギー効果を与えた場合,熱帯部分に比べて極地部分が敏感に反応するという点が注目されます。

オゾンも気候変動にかなり複雑な効果を与えます。我々は,オゾンの量を変えるとどのような影響が出るか調べて見ました。先ず,成層圏からすべてのオゾンを取り去ってしまった場合,より多くの太陽エネルギーが対流圏と地表に到達し,地表温度の上昇が起こります。次に,成層圏のオゾンを倍増するとどうなるか調べて見ました。これは地球規模の環境汚染により成層圏のオゾンが増加した場合を想定したわけですが,結果としてある程度の温暖化が起こります。対流圏の上部あるいは成層圏(ジェット機の飛行高度)のオゾンを取り去ってしまうと寒冷化が起こります。すなわち,気候に対するオゾンの影響は,オゾン量の変化が大気のどの部分で起こるかによって異なるということが分かります。最後に,大気中からすべてのオゾンを取り去ってしまうとどうなるか調べて見ました。この場合は,多少の寒冷化が起こりますが,気候に対する影響は殆どないものと言えます。ただし,すべてのオゾンを取り去ると太陽からの紫外線が地球上のすべての生命体を滅亡させてしまうことになります。

このようにして我々は気候モデルをいろいろ操作し,システムがどのように反応するかを調べます。このモデル化により過去50年間における気温変化を説明できるようにし,何故ある場所では寒くなり,何故ある場所では暖かくなるかを理解できるよう,研究を続けているのです。これが,我々の気候モデル開発の最も重要な目標なのです。

ここで話のテーマを少し変えたいと思います。それは,大気中のエアロゾルの観測についてです。エアロゾルについてはまだはっきり分かっていないことが沢山あります。我々はこれを研究するために,いくつかの異なった波長のフィルターを通して観測をおこなっています。私たちの眼は太陽光線のスペクトルにおいて例えば,青色,緑色,赤色,などを識別することができますが,これらは3個のフィルターに対応します。我々の用いている観測装置はもっと多くの波長帯におけるフィルターを持っており,これによって更に多くの情報を得ることができるわけです。大気中に存在する気体,例えばオゾンはスペクトルの可視部で太陽光を吸収しますから,それに対応する波長でいくつかのフィルターを用いて観測することにより,オゾンの量を計測することができます。

図9 図10 図11

図9の左部分の実線スペクトルはNO2(二酸化窒素)による吸収を示しています。この気体はふつう大気汚染から来るものです。これに対し,いくつかの波長でのフィルター(番号3,4,5,6,7)を用いて大気中の量を計測します。こちらのフィルター(番号1,2)はエアロゾルを計測します。この波長域では気体による吸収はなく,エアロゾルによるものだけが存在します。エアロゾルは基本的に,(我々が用いているフィルターの波長域を含めて)すべての波長帯で吸収,あるいは散乱を起こします。半径が非常に小さなエアロゾルによる散乱はレイリー散乱と呼ばれ,空の青さを作り出しているものです。散乱現象は散乱粒子の半径に強く依存しますので,粒子を大きくすると青さは弱くなり,最終的には色が見えなくなります。すなわち,我々がやっていることは基本的に,色を調べることによってエアロゾルの大きさを決めているわけです。

図10はそのような観測の一例です。測光装置を太陽に向け,図から分かるように,日の出から始め,正午,日没時,と,いくつかの異なった波長帯でこのように太陽光の強度を計測します。この例では夕方頃に雲が出て太陽が隠されるということがありましたが,それは太陽光強度の減少となって示されています。

観測結果の分析は割合に簡単です。1日の各時刻での計測データの対数値を相対大気量の関数としてグラフにします。相対大気量とは太陽光が通過してきた経路の大気の量を表すものです。正午に真上から太陽光が入ってくる時の相対大気量を1とし,太陽高度が低くなるにつれてその値は大きくなります。各波長におけるこれら直線グラフの傾きが,それらの波長に対応するエアロゾルの量を示してくれます。

図11は観測結果の分析がどのようにおこなわれるのかを実際に示したものです。レイリー分散による吸収,オゾンによる吸収,NO2による吸収,そしてエアロゾルによる吸収の観測結果をモデルによる理論計算と比較します。この際,最小2乗法を用いた「力づく」方式を用います。オゾンの量とNO2の量をいろいろ仮定し,それら全ての組み合わせに対して観測値を予測し,そのうちどれが実際の観測値に一番近くなるかを調べるのです。この図の真中あたりの十文字の印のあるところが最小2乗法による最適点(観測値との差が最小)であり,この点におけるオゾンとNO2の値が決められ,それに基づきエアロゾルの量も決められます。

図12 図13

図12は日中のエアロゾル量(正確には,いくつかの波長におけるエアロゾルの「光学的厚さ」)の変化の例です。見て分かるように,朝方はエアロゾルの量が多く,時間がたつと次第に減少していき,午後はほぼ一定となっています。オゾンと,NO2についても同様の計算を行いましたが,これらの変化は基本的には1日を通して一定でした。我々の結果をチェックするために人工衛星による観測値と比較してみましたがほぼ一致しております。

図13(左上)は年間を通じてのエアロゾル量の観測結果です。エアロゾル量は冬期には最低,夏期に最高となっています。非常に値の高い日が所々にありますが,これはもやの多い日です。エアロゾルのサイズ変化(図13右上)に関しては,冬期に大きく,夏期に小さくなっています。何故こういう現象が起こるのかはよく分かりません。おそらく季節によって種類の異なるエアロゾルが生成されているものと思われます。夏期には硫化物を含むエアロゾルが多く,冬期には炭素を含むエアロゾルが多くなる可能性が考えられます。図13(左下)はNO2の変化を示しますが,NO2のピークは6月頃になります。図13(右下)は年間のオゾン量の変化で,最高となるのは4,5月頃です。

これらの観測は,我々の気候モデルに入力するためのエアロゾル量の値を精密なものにするためのものです。エアロゾルは時間的な変化が特に顕著なため,扱いが特に面倒です。そのため,我々はこのような観測をアメリカや世界のいろいろな国でおこなっています。

ご静聴有難う御座いました。最後に我々の研究所のウェブページをもう一度お見せしましょう。日本のウェブページには,日本語と英語の2ヶ国語のものがよくありますね。我々のウェブページも将来は日本語バージョンを作りたいものと思います。

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上記の肩書・経歴等はアキューム10号発刊当時のものです。