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Accumu Vol.18

卒業生登場 「起業家という生き方」

アイティオール(株)〈東京都港区〉 代表取締役 鹿島 雄介さん

2001年 KCG情報処理科卒

大阪府立刀根山高校出身

インタビュー

アイティオール(株)を立ち上げ,代表取締役に就く鹿島雄介さん
アイティオール(株)を立ち上げ,代表取締役に就く鹿島雄介さん

―本日は,KCGの卒業生で,アイティオール株式会社の代表取締役,鹿島雄介さんにお話を伺いたいと思います。まず会社の事業内容から教えてください。

当社の事業内容は,大きく二つに分けることができます。一つはシステムソリューション事業として,ECサイト,SNSやCMSなどのウェブ関連のシステム開発のほか,ウェブサイトの制作も行っています。企画段階で,お客様のニーズを十分に把握しながら開発するように心掛けています。

もう一つは,メディアソリューション事業です。これは当社独自のウェブサービスを提供する事業です。現在はジュエリーの通販サイトや,情報系サイトを中心に約50サイトほどを運営しています。私は1998年頃から,インターネットドメインの取得を積極的に行ってきました。その結果,「idai (医大).net)」「kensaku(検索).net」など現在500個を超えるドメインを所有しています。つまり検索されるワードとして価値の高いドメインをまず押さえ,その後,所有するドメイン名のコンセプトに適したインターネットメディアを順次展開していくという戦略です。

―元々,起業したいという希望をお持ちだったのですか?

はい。高校時代から,35歳ぐらいまでには起業したいと思っていました。実は,最初は,ケーキの店を持ちたいと思っていました。それで高校を卒業してから,まずは製菓の学校で学びました。その一方でコンピュータにも強い関心を持っていて,独学で自宅にサーバを構築したりしていました。その後,路線を変更してコンピュータを本格的に学ぼうと思い,情報系の専門学校に進学しました。しかし,授業内容が期待外れで,学校に行く意味を感じられず,このままでは駄目になると思いました。それで,どうしようかと迷って,別の学校に移ることにしました。いくつか候補を考え,慎重かつ真剣に考えましたね。最終的にKCGに転入することに決めました。面接した先生方が親身に相談に乗ってくださったことと,学びたいことを柔軟に学べそうだと思ったからです。

―学院での学生生活はいかがでしたか?

「KCG在学中は貪欲に学んだ」と語る鹿島さん
「KCG在学中は貪欲に学んだ」と語る鹿島さん

1年間という短い時間でしたが,とても充実していました。先生方のレベルも非常に高くて,いい刺激を受けました。それまで自分は,体系的な学問には興味が無かったのですが,KCGには京大出身の方も多く,そうした先生方の授業を受けて,体系的な学問も面白いものだなと思いました。KCGの良いところは,学ぼうという意欲を持っている者に,さまざまなチャンスが与えられることだと思います。私も在学中は貪欲に学びました。卒業後,私は就職と同時に東京理科大学に編入学することになるのですが,これはKCGの先生方から受けた影響が大きいですね。それから,期間も短かったので在学中は友人もそれほど多くはできなかったのですが,色々な縁で卒業後に一気にKCGの仲間が増えました。これは大変良かったと思いますし,今では多くのKCGの仲間と連絡を取り合っています。

―KCGを卒業後,東京で就職されたのですね?

はい。いくつかの企業から内定をいただいたのですが,結局,同窓会サイト「この指とまれ!」を運営していた「株式会社 ゆびとま」に2001年,入社しました。私が入社した1週間ほど前に前任者が退職したばかりで,資料を渡されて,サーバセンターの管理を任されました。無茶といえば無茶かもしれませんが,これはチャンスだなと私は思いました。仕事の内容は非常に濃かったですね。長崎の本社に詳しい技術者がいたので,相談には乗ってもらえました。典型的なベンチャー企業を見ることができたので,本当にいい経験になりました。

―結局,この会社に在籍したのは?

1年8ヵ月ほどです。その後,比較サイトを運営する,比較.com 株式会社の設立に関わります。ゆびとまの担当者だったベンチャーキャピタルの方と2人で創業し,取締役に就任しました。25歳のときです。

私はシステム開発を担当し,また,営業活動にも積極的に参加するようになりました。もともとプロトタイプ版ともいうべき個人運営のサイトがあったのですが,それを継承する形で事業を始めました。海外から購入したCMSが既に導入されていたのですが,その後の拡張がしやすいよう,結局は作り直しました。

私たちが会社を設立した時期は,比較サイトがブームになる少し前で,創業は2003年8月4日ですが,その日の日本経済新聞に「カカクコム」上場決定の記事が載っていました。まさにすごいタイミングだったわけで,比較サイトブームの波に乗ったといえます。当初は,会社の打ち合わせも喫茶店などで行っていたのですが,3ヵ月ほどで事務所を自由が丘に開設できました。

―順調なスタートだったわけですね。

しかし,しばらくしてから私は退社します。現在は代表者として,当時のパートナーの気持ちが分かるようになりましたが,そのときは分かりませんでした。取締役と従業員の差はあまりありませんが,代表取締役と取締役の差は計り知れないです。もしベンチャー起業に関わるというのであれば,社長のことをどれだけサポートできるか,多少,理不尽なことがあっても,ついていくだけの覚悟があるかを自問したほうがいいです。比較.com は,私が退社してから1年半ぐらいで東証マザーズに株式上場しました。自分はその上場には関われなかったわけで,やはり悔しかったですね。でもこのときの悔しさは,今の自分の原動力になっていると思います。

―退社されてからはどうされたのですか?

故郷の大阪で起業しようと思っていました。しかし,3社からうちに来ないかと声を掛けていただきました。ベンチャーのほか,有名な大企業の社長から直々にお誘いもありました。悩みましたが,生活の安定よりも仕事の面白さを求め,この人と仕事をしたいという気持ちを優先にしました。結果的にはゆびとま時代の上司の誘いにより,2004年に株式会社サイバーブレインズ(現・楽天リサーチ株式会社)に入社し,さらにその翌年,2005年には,その上司と共にネットエイジア株式会社を創業し,取締役に就任しました。ネットエイジアには,2回目の取締役の任期が満了するまで在籍しました。社内外のサイトの企画を立案したり,自社運営のホビー通販サイトの責任者としてオンラインゲームのさまざまな商品開発を担当しました。

―それで,2007年にアイティオール株式会社を設立されるわけですね。

はい。会社設立には,これまでの経験がすべて活きましたね。今後は事業内容では,独自のメディア運営の比率を上げていきたいです。そして,いずれは株式上場を視野に入れています。上場は最終目標ではなく,一通過点として大きな意味があります。会社の信頼度も大幅に増し,次のステップに進むのに十分な資金調達も見込めます。ただ,さまざまな事例を見てきましたが,急成長する企業は急降下することも多いです。急ぎすぎず,着実に業績を伸ばしていきたいと思います。2008年に当社は,イノベーティブな企業だということで,東京都経営革新承認企業として認定も受けました。

―ところで社名の由来は?

アイティオールは,IT ALLです。「ITすべて」という意味です。ITのすべてにおいて,最先端をいく企業を目指し,自分たちで多くのメディアやビジネスを創造したいと思っています。「好きこそ物の上手なれ」ということわざもありますが,好きなことをしているときは,苦労や辛さも乗り越えられます。これからもさまざまなことにチャレンジし,多くの人を楽しませることのできるエンターテイナー企業を目指したいですね。そのためには,まずは自分たちが楽しむことが重要だと思っています。

―最後に,KCGの後輩たちにメッセージをお願いします。

「起業家を目指して」と学生にエール
「起業家を目指して」と学生にエール

安定を求める生き方もあると思います。私の場合は,面白いことをやりたいと思い,アントレプレナーという生き方を選びました。2008年には兼務でVFJインベストメントLLPという投資関連会社の設立にも参加しました。会社設立の参画としては4社目となりますが,こちらは取引先であったゲーム会社の元代表を筆頭に,現在は証券会社監査役,税理士,司法書士といったメンバーと,IT担当で私が役員となり,各々がそれぞれの得意分野を生かして活動しております。皆さんは開発者となるための勉強をされていますが,技術だけでは面白いことはできません。やはり仕事をしていく上で大切なのは,人とのつながりです。つながりを作るには,外に出ることが必要です。私の場合は金融業界出身の年上の方とパートナーを組む機会が多かったですが,皆さんも積極的に外に出る機会をつくり,分野を問わず,色々な人とつながってください。KCGで学ぶ皆さんのなかから,起業家を目指す方が一人でも多く出てきてくださることを期待しています。

アイティオール株式会社

東京都港区浜松町1丁目2番17号 ストークベル浜松町ビル7F

TEL:03-5777-2021

設立日:2007年4月11日

資本金:17,000,000円 (2009年3月)

URL:http://www.itall.co.jp/ (モバイル版:http://itall.mobi)