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Accumu Vol.15

頑張れば,多くの人が支えてくれる 「kcg.edu」インテグラドライバー 伊藤 裕士さんが引退

「kcg.edu」インテグラドライバー 伊藤 裕士さんが引退

kcg.eduが2005,2006年に参戦した「ホンダエキサイティングカップ・インテグラ ワンメイクレース」で専属ドライバーを務めた伊藤裕士さん(京都府亀岡市在住,36歳,京都コンピュータ学院自動車制御学科顧問)が,引退することになった。「kcg.edu 京都コンピュータ学院」と記された青の車を操ってサーキットを駆け抜け,総合成績で2年続けて表彰台に上がるなど好成績を残した伊藤さん。KCG専属を含め13年間にわたってチャレンジし続けたサーキットに,ヘルメットを置いて静かに別れを告げた。KCGは2006年12月22日の特別講義に伊藤さんを招き,感謝状を贈呈。伊藤さんは「自分が頑張ることで,多くの人が支えてくれる。それぞれが面白いもの,好きなものを見つけて打ち込んでほしい」と学生たちにエールを送った。

伊藤さんに思い出話などをうかがった。

「kcg.edu」インテグラドライバー 伊藤 裕士さんが引退

―2年連続表彰台と活躍されたインテグラレースを振り返っていかがですか。

伊藤縁があって「kcg.edu」のサポートをいただけることになり,自動車制御学科ができたこともあって何とか良い成績を上げたいと思いました。1年間で日本各地のサーキットを転戦する「インターシリーズ」6レース(2006年は都合で5戦)と,年に一度のビッグイベント「F1日本グランプリ記念インテグラチャレンジカップレース」で構成される国内最速のワンメイクレース。いろんなことがありましたが,総合で2005年が2位,2006年は3位と表彰台に上がることができ,ほっとしています。サポートに何とかお応えできたのではないかと思っています。

―印象に残っているレースは。

伊藤まず2005年10月の第5戦,栃木県の「ツインリンクもてぎ」で開かれたレースですね。そのレースではスポンサーの関係で,雨に強いタイヤを付けていました。予選は土砂降りでトップで通過してポールポジションをとれ,順調だったのですが,決勝では一転してドライに。全くタイムが出ず,レース前から「今回は(上位は)無理だな」と弱気になっていました。するとチームの仲間が,顔を見て感じ取ったのでしょうか,「最後まであきらめるな。やるだけやってみろよ」と。その言葉をもらってわれに返り,チャレンジしたところノーミスで追撃を振り切り,チェッカーフラッグを受けた。その年のインターシリーズ初めての優勝でもあり,大きな自信になりましたね。その勢いで,次の最終戦(11月27日,三重県の鈴鹿サーキット)でも優勝できました。

そして,やっぱり2005年10月の「チャレンジカップレース」です。鈴鹿サーキットで開催される「F1世界選手権シリーズ 日本グランプリレース」の記念レースに位置付けられ,F1決勝の前にスタートするとあって,観衆の数がものすごかった。15万人いたそうです。そんな中でレースをするというのはドライバー冥利に尽きます。自動車制御学科をはじめ多くのKCGの学生さんや教職員の方々が応援に駆けつけてくださったのも心強かったですね。声援の後押しもあって,2位に入ることができました。

―2006年をもって引退ということですが。

「kcg.edu」インテグラドライバー 伊藤 裕士さん

伊藤ドライバーになった理由は,ただただ車が好きということだけでした。とにかく速く走れるようになりたかった。峠なんかを飛ばしながら「いつかはサーキットで走るんだ」という夢を持ち続け,23歳のときに初めてレースに出る機会を得ました。

最初のころは会社勤めで,会社はレースの日には休みをくれ,平日であっても土日曜日に代わりに出勤すればいいという形にしてくれたので,非常にありがたかった。大きな理解のおかげで,レースに専念することができました。経験も積め,2003年には中島悟賞をいただきました。

しかし数年前に独立して会社を立ち上げ,従業員を抱えるようになった。結婚もして家族もできた。車が,レースが好きなことに何の変わりもないのですが,背負うものができたために,集中できる時間が減ってきました。それが引退の理由ですね。

ワンメイクレースなどは経験がものを言うところがありますので,私より高齢の方が多く参加されています。ですから,年齢が理由ではありません。

―最後に,学生に対してひと言。

伊藤車好きの私にとって,自動車制御学科というのはワクワクするような所ですね。自動車のみならず,今はあらゆるものにコンピュータが搭載されている。必要とされる人材になってほしいですね。

私がレースで学んだのは,先ほど2005年第5戦のときにも言いましたけど,あきらめては駄目だ,ということです。スポンサーが付くようになると,常に結果が求められるようになる。プレッシャーは多々ありましたが,乗り越えることができました。

人はよく「才能」とか「環境」とかと口にします。確かに大事なことなのでしょうが,それを言い訳にしないで,まず自分が好きなこと,あるいは道を決め,一生懸命やってみる。それを続けていれば,いつの間にかたくさんの人が支えてくれるようになる。あきらめた瞬間,可能性はゼロになってしまう。「ネバーギブアップ」ですよ。


「kcg.edu」インテグラドライバー 伊藤 裕士さんが引退

kcg.edu 伊藤さんのインテグラワンメイクレース戦歴

2005年
インターシリーズ

第1戦 4月 鈴鹿サーキット 4位

第2戦 5月 スポーツランドSUGO 13位

第3戦 7月 MINEサーキット 4位

第4戦 8月 富士スピードウェイ 6位

第5戦 10月 ツインリンクもてぎ 優勝

第6戦 11月 鈴鹿サーキット 優勝

チャレンジカップ

10月 鈴鹿サーキット 2位

シリーズポイント

79点 総合2位

2006年
インターシリーズ

第1戦 4月 鈴鹿サーキット 着外

第2戦 5月 ツインリンクもてぎ 6位

第3戦 8月 富士スピードウェイ 2位

第4戦 9月 スポーツランドSUGO 3位

第5戦 11月 鈴鹿サーキット 2位

チャレンジカップ

10月 鈴鹿サーキット 3位

シリーズポイント

59点 総合3位

「kcg.edu」インテグラドライバー 伊藤 裕士さんが引退