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Accumu Vol.12

中国のIT産業の現状と大学教育

吉林大学 計算機教学・研究センター教授 Xuan Guangjun 玄 光均

中国の大学教育―吉林大学の紹介

中国の大学の教育体制

中国では,国立大学が全体の約95%を占めています。その数は全国普通大学が1396校,全国成人大学が607校になります(2003年3月現在)。私立大学も約5%(133校)あります。中国では改革開放政策に伴い国内教育市場も開放され,アメリカ,日本,シンガポール,オーストラリア,韓国など,外国の大学や専門学校と合弁して学校を作ることも大変増えてきています。京都コンピュータ学院も,中国の天津科技大学などいくつかの大学と合弁しています。また,外国で学校を作る場合もあります。上海中医薬大学,上海復旦大学などがその例です。

現在,中国の大学では,講義,実習と研究が中心ですが,大学内の科学技術産業(大学内企業)も発展しつつあります。吉林大学でも学内科学技術企業が100社余りあり,そのうち,学内の独資企業が約80社,株式会社が約20社となっています。代表的な企業に吉林大学正元情報技術株式会社,吉林大学電信工程会社,長春吉大高新材料会社,長春吉大小天鵝機器会社,長春吉大天元化学技術会社,吉大科教機器工場などがあります。吉林大学正元情報技術株式会社(1999年2月25日成立)は従業員が200人程度おり,97%以上が大学の本科以上の卒業生です。eコマース分野に重点を置き,デジタル認定書の認証システムなどを開発しました。現在では中国最大の認定書メーカーの一つとなっています。

中国の大学の修業年限は日本と同じで学部(本科)四年(特殊なものは除く),修士二年,博士三年ですが,他に学部の専科が二年または三年となっています。大学入試は毎年7月に行われ,新学期は9月からです。入学後一ヶ月は特別講演,軍事訓練などの入学教育を行います。

学而不厭 誨人不倦

 自分に対しては「学びに厭わず」

 他人に対しては「人を誨えて倦まず」。

少壮不努力 老大徒傷悲

 若い時に努力をしなければ,年をとってからいたずらに悲しむだけである。

吉林大学の概況
吉林大学の概要

吉林大学は中国東北地区中部吉林省の省都である長春市にあります。長春市は吉林省の政治,経済,文化の中心です。長春市は以前は「新京」と呼ばれ,旧満州国の首都でした。中国の最後の皇帝溥儀はこの新京の皇宮にいました。

現在の吉林大学は,(旧)吉林大学,吉林工業大学,白求恩医科大学,長春科学技術大学,長春郵電学院の5つの大学の合併により,2000年6月12日に開校しました。

吉林大学は,中国の教育部(文部省)直属の国家重点総合大学です。すでに学士から修士,博士および博士後にいたるまでのハイレベル,ハイクオリティな人材育成システムを構築しており,幅広い専門分野と国内最大の規模を有する大学として,国内外から高い評価を受けています。国際交流も盛んに行われ,世界約40カ国,120余りの大学や科学研究機関と協力,交流関係を結んでいます。また,国際合作交流部留学生科および交流学院を設け,特に外国人留学生の交流と教育を進めています。

吉林大学の大学生の学習

主に,吉林大学のコンピュータ専門教育について紹介します。計算機学院(学部)には,ハードウェア専門とソフトウェア専門があります。

学生は大変熱心に講義を聴きます。出席率は98%ぐらいで,遅刻,早退はほとんどありません。たいていの学生は授業の始まる30分から1時間前に教室へ行き,できるだけ前の方の席を探して座ります。宿題,レポートの提出率はほぼ100%で,よく質問をします。先生を尊敬し,学生たちもお互いによく協力します。冬には学生たちが温かいお茶を教壇に用意してくれることもあります。これは,大変うれしいことです。

現在,中国では吉林大学を含む45の大学で遠隔教育(ネットワーク教育)が行われており,約20万人の学生が在籍し,学習しています。ネットワーク大学の利点は,誰でも,いつでも,どこでも,どの内容からでも,どの科目でも,学習できることです。授業方式はVOD(Video On Demand)で,学生はいつでも授業を受けることができます。課題,指導はすべてネットワークを通して行います。遠隔教育は今後一層発展すると考えられており,教育の情報化が期待されています。

試験は,理論と実際とを関連付けることを重視しており,暗記するものは少ないです。出席率が低かったり,レポートの提出率が規定に満たない場合は,試験を受けられません。試験中は複数の試験監督がおり,不正行為を行った場合には,すぐに処分されます。また,必須科目が5科目以上不合格になった場合や,各学年の取得単位が規定数に満たないと退学処分となります。個人成績には処分を受けた記録も含まれています。この個人成績は本人に一生ついてまわり,就職,転職の際にも重要な資料となります。中国の大学生は,成績を大変重視しています。

大学生の生活

学生部には教育課などのほかに,専門の指導員がおり,学生に関する業務全般を担当しています。

中国の大学では,98%以上の学生が大学付属の寮で集団生活をしています。吉林大学の寮は一部屋で4人,大学院生は2人で,部屋には電話,PCがあり,ネットワークにつながっています。

また,奨学制度も充実しています。以前は,アルバイトをする学生は少なかったのですが,最近は,学費,生活費,そして社会を体験するためにアルバイトをする学生が増えてきました。アルバイトは,主に家庭教師です。

大学生の就職

吉林大学には卒業生就職サービスセンターがあり,全校の卒業生の就職指導を行っています。

以前は決められたところに就職するのが一般的でしたが,近頃は学校が推薦し,面接などを経て学生と企業双方の合意の上で就職するのが一般的になっています。

一般的に一番人気のある職業はソフトウェア開発者だと思います。現在は情報時代・知識時代で,以前の工業時代とは違います。「実践的な技術」,「専門知識」,「才能」が尊重されます。IT関連の職業は一番前途有望な職業だと考えられています。

これ以外に一般的に人気のある職業として,建築業,弁護士,スポーツ選手,公認会計士,証券会社,広告会社,特殊養殖産業,整形外科医,コーディネーターなどがあげられます。

厳格考試入学

 入学試験は厳しく選抜される

厳粛学習風気

 学習の雰囲気は厳粛である

厳明考試紀律

 試験の規律は厳しい

厳格評巻標準

 採点は公平で厳格である

厳格昇降制度

 進級,落第の制度は厳格である

熱情就職指導

 就職指導は熱心である

中国のIT産業の現状と展望

中国の主なIT企業
中国におけるIT産業の規模と現状
I・コンピュータ産業の概況

①ハードウェア産業の現状

中国の主なITメーカーである「聯想」は,特にPCなどのハードウェアを製造している企業で,PC生産では中国第1位です。1996年は22万台,2001年は320万台を出荷しました。売上高は300億元(4285億円)で,アジアでトップ,全世界でもトップ10に入っています。2001年,明基電通は液晶ディスプレイの国内販売台数で第1位,EPSONは中国国内においてプリンタとプロジェクタ部門の売上高が第1位,浪潮はPCサーバの売上が第1位となっています。また,富士通と紫光のノートPCはとても有名です。

PCの売上台数は,2001年は806万台。2003年には1320万台,2006年には2123万台になる見込みです。現在,中国全土でのコンピュータ保有量は3500万台以上と言われています(普及率は約3%)。中国は,今やアメリカ,日本に次ぐ第3位のPC市場となっています。このままのスピードで発展するならば,2003年には中国のPC市場は日本を抜いて世界第2位になると予想されます。

②ソフトウェア産業の現状

中国は1958年に国内第一号機となるコンピュータが誕生し,1960年代からOSの研究開発を開始したので,現在のIT先進国に比べても研究開発のスタート時期はあまり遅くありませんでした。その後,1990年代半ばから中国のソフトウェア産業は急成長を遂げ,特に2001年以降さらに発展を続けています。

2001年3月の国家統計によると,中国国内におけるソフトウェア関連企業およびサービス関連企業の数は1万社を超えました。ソフトウェア関連企業5700社余りのうち,国営企業は30%,集団・私営企業は60%,外資系企業は10%です。

現在,全国でソフトウェア関連の仕事に従事している人は約40~50万人ですが,専門的な人材は不足しています。ソフトウェア専門技術者が少なく,特に高レベルの知識を持った人(システム分析員など)がとても少ないのが現状です。

将来のソフトウェア企業と産業の発展のため,2001年7月,国家情報産業部は北京,上海,南京,広州,杭州,大連,成都など11の都市を国家ソフトウェア産業の拠点と指定し,「ソフトウェア特区」を設置しました。また,中国教育部と国家計委は,吉林大学を含む国内35の大学に「ソフトウェア専門学院」を新設することを決定しました。

現在,中国では情報化(IT化)を非常に重視しており,情報化の発展,すなわち「情報化で工業化を促進する」ことを第一の国家戦略として位置づけています。

③ソフトウェア産業の発展モデル

中国では,ソフトウェアの応用技術を通じて国民経済の発展を進めるため,まず国内市場に向けて独自のソフトウェアを開発し,それを世界市場に広げる計画を持っています。しかし,技術力,資本力がまだ十分ではなく,その計画を実行するには現段階では難しい状況です。

現在,中国国内市場と世界市場は密接な関係にあります。マイクロソフト社のWindows,Officeなどの中国版と英語版は,言語の違い以外は機能的な差はありません。また,MS-Officeと互換性のある中国語のソフトも開発されています。

他国の状況を見てみると,インドは主にアメリカのソフトウェア開発の仕事を受け,それを輸出する輸出加工型の産業形態となっています。すなわち,アメリカなどがソフトウェアのシステム設計を行い,インドがそのプログラム開発の受注を行い製品にするものです。

アメリカは,ソフトウェア輸出型です。

日本は,内需型のソフトウェアの輸入消費国だと思います。2000年に日本が輸入したソフトウェアは97億ドルで,そのうちアメリカから輸入したものが95%を占めます。

韓国も内需型のモデルです。一方では自国で開発したソフトウェアシステムを発展させるための努力をしています。

II・IT産業の合弁

世界規模での科学技術の発展と経済の一体化が,現代の世界経済発展の特徴です。「世界規模」と「一体化」の条件下,全世界規模で人材,物資,資本,情報,知識の流通と融合が行われています。それにともない,企業は世界中で研究や開発,生産などを行うことができるようになりました。

中国は人口が多く(約13億人),土地も広く(960万km2),資源も豊富で,急速に国民経済が発展していますが,先進国に比べて生活水準は全般的にはまだ低い状況です。しかし,大変活力がある国です。土地の値段は低く,また人件費もとても低く,一般的に日本の給与の10分の1程度です。特に労働密集型の企業の多くが,中国に工場を造って生産を計画しています。

1980年代末から,日本のIT企業は中国に生産基地を建設しています。日本にあった生産基地を中国に移した企業もたくさんあります。マイクロソフトも中国に工場を造り,インテルは中国でPentium4などのCPUを生産しています。IBMは投資額を1億ドルにして,10万人の中国人ソフトウェア技術者を育成し,LGも投資額を4億ドルにする予定だそうです。モトローラは,2007年までに300億ドルの投資などの計画があるそうです。すなわち,①中国から100億ドルの情報機器関連部品の購入,②中国で100億ドルの製品の生産,③中国への100億ドルの投資,というものです。また,東芝は70億円を投資して,中国に新しいノートPCの生産工場を造ることにしたそうです。台湾の企業も工場を造り,30万人の中国人労働者を雇用しているそうです。ドイツ,韓国も同様に中国に積極的に投資しています。このように,世界のIT関連の製造企業が中国に積極的に投資しています。

ここでは,特に中日両国のIT企業の合弁について述べたいと思います。

1980年代後半,中日両国は家電分野で,1990年代後半には半導体分野で,現在はIT分野で合資合弁を進めています。

現在,中日両国のソフトウェア関連企業の合弁の主な形態は,日本から中国にプログラムの作成を委託する形が多いようです。日本側が基本設計などの主要な工程を担当し,中国側はプログラムの作成や,動作テストなど生産工程を行います。しかし,将来は中日両国のソフトウェア関連企業が,次第に共同研究開発の方向で進んでいくと思います。

日本のソフトウェア産業も知識密集型の産業ですので,コストを抑えるために家電などの製造企業に続いて徐々に生産基地を中国に移しています。NECや日立では中国での開発要員をすでに増員,または増員することを決めているそうです。中国のソフトウェア企業への委託料は,日本企業の半分程度です。また,中国の待遇政策もあります。中国の技術レベルも高くなってきており,日本企業は低コストを常に追求しているので,将来,ますます日本企業が中国に移転することを確信しています。

以上,述べましたように,中日両国は「互補互恵」として共に発展しています。これは確かによいことですが,もし,将来プログラム開発などの生産工程をすべて中国などに委託してしまうことになれば,日本国内のプログラム技術者は,失業の危機に陥るのではないかと考えます。このような将来を考えると,今,情報処理の技術と中国語をしっかりと勉強することが大事なのではないでしょうか。

III・IT訓練とIT試験

①IT訓練

中国はIT認定訓練市場も広く,2001年には5.6億元の規模となっています。現在マイクロソフト,IBM,SUNなどのIT企業が中国でIT訓練の試験センターを設立しています。

②IT試験

中国のコンピュータ専門技術資格およびレベル認定の試験は,現在,中国IT分野の最高レベルの国家試験です。開始以来,15年ですでに20万人が合格しました。

このIT試験は,日本でも認定されているそうです。中国の「普通プログラマ」と日本の「基本情報技術者」,中国の「高級プログラマ(SE)」と日本の「ソフトウェア開発技術者」,また,中国の「システム総合分析員」と日本の「システム監査技術者」がそれぞれ対応しています。

中国では,IT試験標準の相互認定は日本が初めてですが,インド,韓国,シンガポールなどアジア地域の国々と相互に認定を行っていくことにより,将来は世界に通用する世界標準の試験になると思います。

IV・IT応用

①電子商取引

中国では,1990年代初期からeコマースが発展し始めました。主な導入部門は,証券会社,金融機構,飛行機の予約センターなどです。現在も発展を加速していますが,B to B, B to C,B to G,C to Cの全面的実行はまだまだで,eコマースの初期段階という状況です。

国連の発表した報告によると,世界のeコマースの取引額は,1994年の12億ドルから,2000年には3770億ドルにまで増えており,2010年には1兆ドルにのぼる見込みです。これは,全世界の国際貿易の3分の1はネットワーク形態での貿易になるとの予測です。eコマースは今後ますます重要になってくることでしょう。

②電子政府

e-governmentは,1993年に米国が提唱した政府建設のモデルです。その目的は,政府機関がITを利用して情報の管理とサービスを行い,高効率,不正防止,人員削減などを進めて,公平な政府を建設するというものです。

中国も,ITを利用して政府組織の改革を行い,電子政府を建設するため力を入れています。1998年11月,「政府ネットワーク化」の実施を決定して以来,1999年は「政府ネットワーク年」として,政府ネットワーク化を全面的に実施しました。その結果,現在,中央政府と省,市政府は,ネットワーク化の基本建設が完成しました。しかし,e-governmentの建設は,まだ初期段階です。

中国のe-governmentの内容は,①電子資料(書類)のデータベース,②公文書の電子化(書類),③電子郵便,④社会保障電子システムサービス,⑤電子商取引(eコマース),⑥政府発注電子取引システムサービス,⑦政府データ処理システムサービス,⑧政府政策決定支援システムなどです。

V・通信産業の現状

中国の通信産業は現在,三大運営会社で占められています(中国電信43.2%,中国移動31.3%,中国聯通25.5%)。

現在,中国の情報通信産業は急速に発展しています。電話機の保有台数は1992年には1000万台でした。現在,中国の移動電話利用台数は世界第1位となり,固定電話のネットワークの規模は世界第2位です。2001年の移動電話台数は約1.5億台,固定電話台数は約1.8億台でした。

現在,中国では毎月400万~600万台のペースで新規登録が増加しています。中国では移動電話の通話料は,発信者・受信者の両方が支払いますが,もし日本と同じように発信者だけが通話料を支払うようになれば,さらに新しい利用者が増えると思います。5年後には,固定電話と移動電話のネットワーク規模は世界第1位になるのではないでしょうか。現在中国の移動通信は,すべてデジタル化を実現しており,アナログ方式はありません。

VI・中国のインターネットの発展と現状

中国は1994年にインターネットへの接続が始まりました。中国政府は,インターネットの国内での応用と発展を推進するために,1999年に「政府ネットワーク,企業ネットワーク,家庭ネットワーク」の三大ネットワークの構築を推進し,国内のネットワークは急速に発展しました。

中国のインターネット人口は,1996年には10万人でしたが,現在では約6000万人で,2005年には2億人に達する見込みです。普及率は15%となる見込みです。

中国国民のインターネット利用状況をまとめると,主な利用場所は自宅であり,夜8~9時がインターネットのラッシュアワーとなっています。1週間の平均利用時間は8時間程度で,毎月の費用は低価格に抑えられています。そして,やはり各種情報を取得することがインターネットを利用する主要な目的となっています。

IT産業の展望
中国IT産業の現状の分析

中国のIT産業は1979年の中国開放政策以来徐々に発展し,1990年代半ばから本格化し始め,現在はさらに発展を続けています。

①中国では,高性能のコンピュータや,応用ソフトウェア,通信設備,家電設備,ITネットワーク設備など,どんな研究開発でもできる状態です。

②中国のIT産業では,核心の「技術」と「部品」が不足しています。(IC,CPUなど)

③中国のIT企業の規模は割合小さく,資本力は弱いです。投入できる開発費は少なく,自力での研究開発も少ないです。そのため,IT企業の分散現象がおきている状況ですから,「連合創新」が大切だと思います。(人材,資本,IT技術)

④IT産業では一般労働者ではなく,高いレベルの管理人材,専門の技術人材,それらを合わせた複合型人材が不足しています。

⑤中国のIT産業の中で重要なソフトウェア産業は岐路にあると言えます。独自のソフトウェア産業を発展させるのか,あるいはMS社と合弁して発展し,MS社のWindowsの下請産業になるかの問題だと思います。国際合弁は必要ですが,その国の内需の推進,自主性がもっと重要ではないかと考えます。

中国でのIT産業はハードウェアの発展を重視しており,ソフトウェアと情報サービスを重視しない偏重傾向にあると思います。

中国のIT産業は将来さらに発展していくと考えられますが,その理由は次のようなことです。

①中国のWTO加入により,今後,世界中のIT企業がこれまで以上に中国に入って投資し,活躍すると考えます。

②WTOの加入後,外国企業の参入により,国内の通信,交通,金融などの分野の情報化が加速すると考えられます。そのため,PCの投入量も増えることが予想されます。

③国家の西部大開発の計画。

④北京オリンピックの誘致成功。基礎設備の改善が必要となり,現代化の建設が加速すると考えられます。

⑤中国政府の指導部はIT産業を大変重要視しています。IT産業の発展は国の戦略であり,意志です。

中国のIT産業の展望

IT基礎技術・応用技術,ブロードバンド化などネットワーク環境を整備し,企業の情報化,電子商取引,電子政府の発展を推進することにより,国民経済が現在のように発展を続ければ,2005年には中国はずいぶん変化すると思います。

2005年には,コンピュータ市場の総売上高は9兆2850億円(6500億元)となる見込みで,世界ソフトウェア産業総額で,中国の占める割合は3%に上る見込みです。通信関連分野では,国内通信関連産業収入が14兆2857億円(現在は6兆7500億円),電話利用総数は5億台程度で,国内の電話普及率が約40%となり,情報通信機器製造産業の売上高は21兆4285億円(現在は14兆2857億円)となる見込みです。これは,固定電話と移動電話ネットワークの規模と容量で世界第1位となることを意味します。インターネット利用者は2億人程度で普及率は15%程度,インターネットにつないだコンピュータは4000万台程度となります。2020年には中国の電話保有台数は,10億台の大市場になる見込みです。

中国のIT産業は中国国民経済産業中,最大の産業になり,第一支柱産業になるでしょう。

5年以内に世界のIT企業の3分の1が中国に進出し,IT製品を中国から輸出することになるでしょう。中国は将来「IT関連産業の世界の工場」になるでしょう。中国が「世界の中の科学技術立国」として前進することを確信して終わりにしたいと思います。

中国IT 離不開世界

 中国のITは世界と離れられない。

世界IT 離不開中国

 世界のITは中国と離れられない。

国際合作 時代的潮流

 国際合弁は時代の流れである。

(本稿は2002年9月25日 京都コンピュータ学院で行った文化講演会の講義をまとめたものである。)

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玄 光均
Xuan Guangjun
  • 1973年中国吉林大学物理学部卒業
  • 1983~86年,1989~90年の二度にわたり,京都大学工学部情報工学科にて共同研究
  • 現在,中国吉林大学計算機教学・研究センター教授
  • 京都コンピュータ学院客員教授

上記の肩書・経歴等はアキューム12号発刊当時のものです。