トップ » バックナンバー » Vol.5 » 対ケニア共和国コンピュータ教育支援活動 悠久なる大地ケニア

Accumu Vol.5

対ケニア共和国コンピュータ教育支援活動 悠久なる大地ケニア

長谷川 由

ケニア

オユギス……時間のない町それは遥なる昔から探し求めていたような何かなつかしい安らぎを与えてくれる町だ寝ころんで空を見上げる牛飼いの男達湖で歌を口ずさみながら洗濯をする女達その周りで泳いで遊ぶ子供達そしてそれらを静かに待つ数匹のロバ達ここではあのギラギラとした太陽でさえふんわりとやさしく空に浮かぶ

車から降りかわききったその赤い土の上に立つとたちまち好奇心の強い子供達に囲まれるこちらから手を延ばせば笑いながらすぐに逃げていくのにただ何もせず微笑みながら坐っていると私たちの腕や髪の毛にそおっと手を延ばしてくる


ケニア

講師の一人であるオウマはこのオユギスで生まれ育ちそしてMITに来た肌の色の違う訪問者は君たちが初めてだろうと彼は言う粘土で作られた彼の実家の「台所」は外にありそこで彼のお母さんが肉料理とウガリを作ってくれたウガリはケニアでの主食で白いトウモロコシの粉で作ったおもちのような物だ私たちのために牛を一頭料理してくれたと後で聞いた二人の叔母さんがオウマの叔父さんをさして「私たちは彼をシェアしているのよ」と言って微笑んだここでは一夫多妻が許される


ケニア

* * *

果てしなく広がるサバンナ

永遠の草原

ここではあの象の群れのざわめきさえ全く大地に吸収されかえってそれが一層の静けさをもたらす禁断の実を食べてしまったアダムとイブが何万年もしてそして帰ってくるだろうこの悠久の地そこで私はあまりにも力強い静けさに抱きしめられ言葉を失っていた文明という不可解なもので作られた白く冷たい車の中で


ケニア

どこまでも透明な空

寛容の大地

ここではどんな悲しみも放散されどんなつらい出来事も静穏な過去となる何か語りたそうなしかし無言の空の下で平穏という香に包まれながら私はただ一心に(もう見えているはずの)南十字星を探していた