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Accumu Vol.15

スコット・ロス氏 特別講演会 「What is Reality?」

デジタル技術を学べば将来は明るい

ハリウッドで映画制作を手がけるスコット・ロス氏が講演

「KCG style 2006」のスペシャルゲストは,デジタルメディアのパイオニアの一人で,米デジタル・ドメイン社の創設者,ILM(Industrial Light and Magic)の取締役であるスコット・ロス氏。10月20日,京都コンピュータ学院京都駅前校で「What is Reality」と題して講演した。同氏は映像を用いながら,「Day After Tomorrow」や「I, Robot」,「Titanic」など自ら制作を手掛けた映画の舞台裏について紹介。「今日ではコンピュータが映画制作の重要な位置を占めている」としたうえで「日本の映画界は世界をマーケットにするという姿勢が必要。そうなれば,KCGでデジタル関連技術を学んでいる学生たちの将来は明るい」とのメッセージを送った。

スコット・ロス氏 特別講演会 「What is Reality?」
スコット・ロス氏 特別講演会 「What is Reality?」

▼ある映像が本物に見えるか,創造物に見えるか。これはアルゴリズムや画像の質にもよる。しかし,視覚能力は日々洗練されていく。スターウォーズの初期のCGは,今となってはとても幼稚に見える。特撮技術やソフトウェアも進化していかなければならないということだ。風景ものでは光源,シャドウ,色が,アニメなどキャラクターものは重みをちゃんと身につけているか―などがポイントとなる。


スコット・ロス氏 特別講演会 「What is Reality?」

▼「Day After Tomorrow」の街を竜巻が襲う映像。5億ドルの興行収入があった作品で,125人が9ヵ月を要して制作した。最近残念に思うことは,映画制作においてストーリーが軽視され,ファンタスティックさばかりが追求されている点だ。


スコット・ロス氏 特別講演会 「What is Reality?」

▼今日ではコンピュータが映画制作の重要な位置を占めている。「I,Robot」は,ロボットと人間が登場する作品。今,話題になっているのは,果たしてCGで俳優がつくれるか,その俳優は演技ができるか,リアルに見えるか―ということだ。一般的に,俳優の出演料は高額で,監督と意見が合わない場合も多々ある。「バーチャル俳優」づくりは,いまやソフトウェアの技術ではなく,制作者の能力にかかっているといえそうだ。


スコット・ロス氏 特別講演会 「What is Reality?」

▼私は日本に100回ほど訪れている。そこでよく聞かれる質問は,日本のアニメ・映画をどう思うか。そして日本のCG担当者は才能があるか―ということ。日本で素晴らしい作品が多く作られていることは言うまでもない。黒澤明氏と一緒に仕事ができたことは非常に光栄だし,宮崎駿氏ともぜひご一緒に,と思っている。そして優秀なCG担当者も多くいる。ほかには次のようなこともよく聞かれる。映画を一本作るのにどれくらいの時間とお金をかけるのか,どんなソフトウェアを使っているのか,と。それは映画制作にはあまり関係のないことだ。作り手がどれだけ優秀なのか,ということにかかっている。


スコット・ロス氏 特別講演会 「What is Reality?」

▼アジア,特に日本は先進のアニメ映画作品を作ってきたが,対象はいずれも自国内においているようだ。日本で上映されている映画の半分は米国の作品。米国は市場を全世界に据え,日本よりはるかに巨額を投じて制作している。日本は世界2位の市場。今後はアジア,日本発信の世界規模の映画制作を期待する。それを実現するには,海を越えたパートナーシップが必要となるだろう。このような可能性があるので,いま京都コンピュータ学院でデジタル関連技術を学ぶ学生の将来は明るいといえる。

以上 講演の概要


[スコット・ロス]Scott Ross

スコット・ロス氏 特別講演会 「What is Reality?」

30年以上のキャリアを持つ,デジタルメディアのパイオニアの一人。ジェームズ・キャメロン氏とともにデジタル・ドメイン社を創設し,最大手のプロダクションにまで育てあげた実績の持ち主。

70年代にはマイルス・デイビスグループなど多くのバンドと巡業し,80年代にはジョージ・ルーカス氏が設立したILMのゼネラルマネージャーとなった。89年にはNTTで「創造力」をテーマとした組織改革をサポートした。

その後,ロス氏の評判は高まり,日本の14の大学で,デジタルメディア関連学部の設立を支援。ロス氏は日本のデジタルメディアエンターテインメント界の顔といえる存在となった。その人脈は,政府高官やゲーム会社のCEO,主要な映画配給会社,黒澤明監督,ゲームクリエイターの宮本茂氏など多方面にわたる。

ロス氏はアカデミー賞を主宰する「アメリカ映画芸術科学協会」,エミー賞を授与する「アメリカテレビ芸術科学協会」のメンバーでもあり,世界20ヵ国以上で,創造的手法やテクノロジーについての講演を行っている。

[デジタル・ドメイン]Digital Domain

デジタル・ドメイン社は,CGを主分野とする映像特撮プロダクション。これまでに,「トゥルーライズ」,「ターミネーター」シリーズ,「アポロ13」など数々の映画の特殊効果を手掛けてきた。「タイタニック」でアカデミー視覚効果賞を受賞するなど,何度もアカデミー賞を受賞している。

また,広告業界においても,NIKE,アメリカン・エキスプレス,コカ・コーラ,メルセデス・ベンツなど500社以上にものぼる有名企業の広告を手掛け,優れたCMなどに贈られる国際的な広告賞の一つであるクリオ賞を何度も受賞している。


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スコット・ロス
Scott Ross

30年以上のキャリアを持つ,デジタルメディアのパイオニアの一人。ジェームズ・キャメロン氏とともにデジタル・ドメイン社を創設し,最大手のプロダクションにまで育てあげた実績の持ち主。

70年代にはマイルス・デイビスグループなど多くのバンドと巡業し,80年代にはジョージ・ルーカス氏が設立したILMのゼネラルマネージャーとなった。89年にはNTTで「創造力」をテーマとした組織改革をサポートした。

その後,ロス氏の評判は高まり,日本の14の大学で,デジタルメディア関連学部の設立を支援。ロス氏は日本のデジタルメディアエンターテインメント界の顔といえる存在となった。その人脈は,政府高官やゲーム会社のCEO,主要な映画配給会社,黒澤明監督,ゲームクリエイターの宮本茂氏など多方面にわたる。

ロス氏はアカデミー賞を主宰する「アメリカ映画芸術科学協会」,エミー賞を授与する「アメリカテレビ芸術科学協会」のメンバーでもあり,世界20ヵ国以上で,創造的手法やテクノロジーについての講演を行っている。


上記の肩書・経歴等はアキューム15号発刊当時のものです。