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Accumu Vol.13

京都コンピュータ学院 創立40周年記念講演 「平和教育への原動力としての情報技術(IT)」

コロンビア大学教育大学院 平和教育学科創設者
コロンビア大学教育大学院 平和教育センター ディレクター
ベティ・A・リアドン博士 Dr. Betty A. Reardon
Founding Director, Peace Education Center
Teachers College, Columbia University

ベティ・A・リアドン博士 Dr. Betty A. Reardon

私はこれから,ITという環境の中で生きてゆく皆さんにとって特に重要となる五つの問題を提示します。この五つの問題は,互いに関連し合ったものです。

1.平和教育の目的は,人間として完成することを目指した学習を指導することである。

2.ITは平和の実現,平和のための学習の最も重要なツールになりうるものである。

3.皆さんの世代の抱く諸価値は,現行の技術と社会に様々な変化を生み出すだろう。

4.技術は暴力のためにも,あるいは平和のためにも,使用可能である。

5.皆さんの世代は,ITを使うときにはいつでも,皆さんの持っている諸価値がテストされることになるのです。皆さんはそういう事態に直面しています。

1 平和教育は人間としての完成を目指す学習

私は,本日の講演の中で,皆さんにいくつもの質問をするつもりです。まず第一の質問は,「皆さんは,将来を変えるために,持っている技術をどのように使いますか」ということです。皆さんが考えるこの世界にとっての重要な変化とは何ですか。私が知りたいのは,学院の皆さんがそうした変化をもたらす手助けをするとして,どのような可能性が考えられるか,またそうした変化を実現するため,皆さんの受けている教育をどのように活用するつもりか,ということです。

平和教育では,最も必要な変化は暴力の克服であると主張します。平和教育は暴力を克服し,正義を実現する方法を学習することに専心します。平和教育のやり方は,主としていくつもの質問文を作り,実際にそれらを質問することによって,その学習を進めていきます。それは,私たちが現実に直面している大きな問題を取り上げて解決するために必要な予備的学習です。それはまた,暴力に取って代わるもの,すなわち人権の保障が平和の基礎であることを常に念頭に置きながら,人権の基盤である正義と公平性のための諸条件の実現を目指す学習です。

したがって,どのような世界を創りたいと思うのか,皆さんの技術をもってどのような世界の実現に寄与することを望むのか,を考え続けることが大切です。ここで,一つお願いがあります。隣の人と向き合って,そして世界を平和に近付けるために,自分ならこうしたいという一つの改革案を相手に伝えてください。そして,それを紙に書き留めてください。それが皆さんの行動の出発点になるのです。さあやってみてください。隣の人に向かって,「私はこんな変化が見たい」と言うのです。(聴衆の学生たちに,このやりとりをするための2分間が与えられた。)

もしも人権が平和の条件であり,また指標であるとするなら,平和教育は,より苦痛が少なく,より人間として完成された世界を実現するための学習に関わらなければなりません。本来,教育はすべて,人間としての完成に関わるべきものです。全ての人が自己の潜在能力を顕在化し,意義深い人生を送り,協力し合って共に豊かになるための積極的な人間関係を築くことに関わるものでなければなりません。私たちが教えることと学ぶことは,そうした目標を達成するために,私たちが知る必要のあることと,なさねばならないことに関するものでなければなりません。

このような理由から,平和教育は特別な知識に関わるのです。それは,技術に関わり,またいろいろな価値と目的に関わります。平和教育の最も重要な価値の一つは,万人に共通の人間としての尊厳です。それは各人にとって生得の価値であり,全ての他者からの尊敬に値するものです。平和教育の重要な目的は,一人一人の尊厳が保障され,全ての人が人間としての完成に努めることが許される世界を実現する能力を開発することです。私たちは現在,その全ての成員に対し,人間としての完成を十分に保障するような世界を持つことができません。しかし,人々が自分たちの力で,それを目指して努力することができる諸条件を創り出すことは,現在でも可能です。

ITを勉強している皆さんにとって重要な問いは,「この技術はどうしたら平和の道具になるだろうか」というものです。言葉を換えれば,「どうすればこの技術は,地球上のより多くの人々を,人間としての完成へと近付ける手段になるのか」ということです。

2 平和実現と平和学習のための道具としてのIT

ITはそれ自身が一つの価値というものではありません。価値とは,善なるものについての観念です。価値とは,私たちがそれに向かって努力しようとするものについての観念です。ITはそうした価値を追求するための道具です。平和教育のために,また人権と平和を目指すその他の努力のためにITを使うことができるかどうか,またどのように使うかは,私たちがITを使う目的としての価値が決定するのです。ITの使用とその抑制は,今日私たちが直面している最も重要な問題です。コンピュータプログラムの所有権をめぐる争いは,単にどの企業がより多くお金を稼ぐかということ以上に重大な問題となっています。こうした論争は技術面に集中していますが,実は,IT使用による情報へのアクセスの問題がより重要なのです。この情報へのアクセスは,民主主義にとって基本的な要素です。それ自体がまさに人権の一つだと私は言いたいのです。

インターネットは,情報の自由な流通によって,より民主的な社会を実現するための技術です。大多数の人々が重要な情報にアクセスできないうちは,私たちは民主的な世界を持つことができません。ちょうど,ジャーナリズムが統制され,メディアが検閲される状態で民主的な国家を持つことができないように。私は,京都コンピュータ学院が,開発途上国にコンピュータを寄贈することによって,情報へのアクセスの向上に貢献してこられたことを知りました。これは,皆さんの学校によってなされた,非常に重要な価値の表明であり,民主主義と社会的正義への一つの貢献です。しかし,学生の皆さんに対しては,まだ質問が残っています。この情報へのアクセスの問題について,皆さんの世代は何をするつもりですか?この問題に取り組むことに,どんな価値を見出しますか?

3 皆さんの世代が直面する難問

どの世代もそれぞれ難問に直面し,いずれの世代も彼らの生きる社会と技術に変化をもたらします。ここでちょっと立ち止まって,皆さんの世代について,さらにそもそも世代という観念とは何か,について考えてみましょう。「Generation(世代)」という言葉は,人間の世代をも,技術の世代をも指すことができます。「generate」の一般的な意味は,生み出すこと,生まれること,成熟してゆくことです。成熟とは,大人として働くことができること,「成年に達すること」です。皆さんの世代は,先ほど平和教育の社会的な目的として挙げた諸条件を実現するためにその技術を使うこともできるという意味で,人間性が問われる重大な時期に成年に達するのです。

私たち一人一人は,一つの世代のメンバーです。しかし,私たちは皆,別の世代によってつくられ,そして私たち自身もまた別の世代をつくるのです。私たちはただちょっと,祖父母と両親の影響を考えてみればいいのです。そうすれば,私たちは自分の子供たちに,さらに運がよければ孫たちにも,どんな影響を与えたいかを考えることができるでしょう。それは社会を構成する5世代にわたる時間であり,大半の人間が経験するものです。

人間の世代というものは,他の世代,すなわち両親とか祖父母の世代とは異なる世代としてのアイデンティティを持つことができたときに,成熟したといえます。それぞれの世代はある意味で独自の文化,つまり一つの文化の中で,サブカルチャーとしての文化を発達させます。特に,現在成年に達しようとしている皆さんの世代は,その変化のスピードと複雑さにおいて過去の世代と比べようもない技術を手に入れています。一つの世代はその社会の中で,そしてその社会に対して責任を負う立場になった時,自らの成熟を宣言します。社会の中での責任とは,仕事や,家族関係や,また私たちが果たすことを期待されている一切の責務の中での,私たちの振る舞い方にあります。社会に対する責任とは,私たちの方から社会に与えるように求められているもの,すなわち共同体,国家,世界に対する責務です。私たちは自らが選んだ目的を通して,私たち自身をその社会に結び付けるのです。各世代はそれぞれ,ある生き方を身につけ,社会的目標を選び取り,それがどんな価値を持つかを考え,一つの世代として社会から何を求め,何を社会に与えるかを,行動で示すのです。一つの世代が真に成年に達する時とは,彼らが生きがいとして選んだ価値へ社会を導こうと試み,彼らの自己完成に関して,社会から何を望むか,そしてその社会の中で他者が自己完成に達するのを助けるため,何をしなければならないか,を表明する時です。

これに対し,技術が成熟したといえるのは,その技術が本来の目的を実現するためにスムーズに働く時です。その「目的」とは,目指す価値が何であるかの表明です。各世代はそれらの価値を反映した技術を発達させ,また利用するのです。高等教育を受ける人々にとって,彼らの世代の目的とそのために必要な技術について価値判断を開始するのは,彼らの学生時代であることが多いのです。皆さんの世代,つまり京都コンピュータ学院の皆さんに突き付けられた課題は,皆さんの持つ価値を実証することができ,かつその価値の実現を可能にする情報技術(IT)を設計し,それを実際に利用することです。ところで,皆さんの持つ価値とは何でしょう?。

そこで,平和教育のための問いとして,私は次の質問をします。

・どのような人生を生きたいですか?

・どのような社会がそのような人生を可能にするでしょう?

・どのような技術をそのような社会は要求するでしょう?

・どのような技術が,また現在の技術をどのように利用することが,皆さんの望む社会を生み出す助けになるでしょうか?

・京都コンピュータ学院で学ぶ皆さんは,そうした技術とその利用に対してどのような貢献をすることができますか?皆さんは,ITを平和学習と平和実現のための道具にできるでしょうか?

・皆さんが現在,その管理と利用の方法を学んでいるITというこの技術を,どのように成熟へと導きますか?

ここでまた,隣の人とアイデアを交換するため,メモを書いてもらいます。ITを使って皆さんの目的の達成を可能にする行動を,一つ考えてください。その行動を隣の人に伝え,実行することを約束してください,そして,忘れないように記録しておいてください。(2分間が与えられた)。

ここまでで,皆さんは成熟へのプロセスの二段階を経過しました。一つの変化と一つの行動です。皆さんの行動は重要です。ITがどちらへ向かうのかを決定することになるのですから。ITは暴力行為と不正にも,また平和とデモクラシーにも利用されてきました。前に触れましたように,ITはそれ自体では何ら価値を持ちません。ITは,私たちの望む価値を実現するための一つの道具にすぎないのです。

4 暴力のためにも平和のためにも利用されるIT

ベティ・A・リアドン博士 Dr. Betty A. Reardon

ITは戦争と抑圧のために利用されてきました。武器を設計し,それを発射して標的に命中させるために,ITは使用されてきたのです。私たちは今やコンピュータ化された戦争を手中に収めていますが,だからといってそれは仮想の戦争ではありません。コンピュータ技術によってもたらされるものは,現実の死であり現実の破壊です。また,一方で貧しい国を搾取しながら,他方で富める国の経済的利益に奉仕している多国籍企業の力をさらに拡大させるために,ITは利用されてきました。ITは,人身売買,すなわちチャイルドポルノなどを含む現代版の奴隷貿易のような,犯罪のネットワークをつくるためにも使われてきました。大半のコンピュータゲームにおける価値観について少し考えてみてください。そのねらいは敵を倒すことです。これが,ITの持つ一面,すなわち戦争と暴力の側面です。

しかしITはまた,人権と平和を求める運動により,またその運動のために,非常に有効に利用されてもいます。医療や素早い救急活動等,福祉活動はITに支えられてきました。ITは,国家を超えた市民社会の急速かつ大規模な成長を可能にしてきました。世界各地の市民が,お互いにコミュニケーションをとり合い,共通の目標に向かって働いています。ITは,人々の意思と権利が尊重される,より民主的な世界秩序を可能にしています。この目標が実現可能になるのは,ひとえに,その情報をもとにして行動することができる人間のところにまで,当の情報が伝達されることによります。

ここで,ITによって促進された平和と正義のための大きな成果を,いくつか挙げてみましょう。1年にもならないごく最近のものとしては(皆さんの中にも参加した人がいるかもしれませんが),2003年2月15日,世界中で1000万人を超える人が同時に,イラク侵攻だけではなく,戦争そのものに対する抗議行動を起こしました。これは,全ての戦争に対する,初めての真にグローバルな抗議行動でした。「End War!(戦争を終わりにせよ)」というポスターの波が続きました。個別の出来事としての一つ一つの戦争に対する抗議から,戦争を引き起こす仕組みそのものへの抗議へと,若い世代によってシフトされたのでした。私はそれが,戦争の廃絶という社会的な目的への参加を,若い世代が自らに課せられた仕事として引き受ける前兆であることを期待しています。

ITは,多くの国際的なイベントや諸会議を開催することによって,グローバルな市民社会の中で,人々が直接会って意見を交換することも容易にしてきました。1999年の5月,世界各地から1万人の平和運動の代表者が集まり,世界会議が開かれました。平和を求める市民会議のためのハーグ・アピールは,共通の関心のもとに活動する多くの人々を直接引き合わせましたが,その後も人々はコンピュータを使ってつながりを持ち続け,運動を続けています。

世界的な女性運動も,その技術を広範囲に利用しています。例えば,2000年に東京で開かれた軍隊における性的奴隷に関する女性国際戦犯法廷は,インターネットを通じて大規模に組織化され,またその結果もインターネットによって配信されました。他にも多くのイベントや運動がITを使って次々に組織されています。

私たちはまた,平和教育の発展とその普及を目指して,各地域でも,またグローバルにも協力し合うネットワークを作るために,ITをとてもうまく利用してきました。顕著な例として,EURED,すなわちヨーロッパ平和教育ネットワークが挙げられます。EU8カ国の教育者のグループが,欧州評議会の認可のもと,全ヨーロッパに共通の平和教育カリキュラムを作成しています。そこで,私は皆さんに聞きたいと思います。「アジアの他の国々の人々と協力して,アジアにおける平和教育のカリキュラムを作ることができるでしょうか?」

平和教育に関する国際大会(IIPE)は,年に一度,8月に世界中の平和教育者が集う会議であり,毎年開催地を変えて開かれます。大会の準備の大半は,eメールによって可能となっています。eメールを使う前は,その作業は実質的に不可能なものでした。しかし,この大会に関して最も重要なことは,単に,志を同じくする教育者が一堂に会して協同作業を行う素晴らしい時間を持つことではありません。より重要なのは,平和教育に関するプロジェクト,つまり今後発展させるべき作業であり,それは教育者たちが集まって,アイデアを交換するからこそ可能なのです。したがって,ITによって皆さんの前に巨大な可能性が開かれているのですが,しかし同時にまた,皆さんの世代は巨大な難問にも直面しているのです。

5 皆さんの世代が直面する特別な難問

ベティ・A・リアドン博士 Dr. Betty A. Reardon

その難問は,いかにして,そしてどんな価値の実現を目指して,皆さんはITを利用しようとしているのか,という形で提起されます。皆さんの世代を,第三地球世代かつ第二惑星世代と呼びたいと思います。この二つの世代は,いずれも技術の形成者であり,またいずれも技術によって形成されてきたのです。これらの世代はまたいずれも先行する世代の影響を受け,後に続く世代に影響を与えます。そして,いずれの世代も,自己の技術が可能にすることを実現させようと試みます。

第一地球世代は第二次世界大戦後の世代,1940年代後半と1950年代の世代です。これは最初の核兵器,テレビという電気通信革命,国際電話による遠隔地との会話,そしてほんの1日くらいで地球をまたぐ飛行の経験を持つ世代です。60年代の初めのジェット機の導入によって,世界はさらに狭められました。

ムーン・ウォーク,すなわち他の惑星に降り立った人間を見た1960年代から1980年代の第二地球世代は,第一惑星世代でもあります。これが皆さんの両親の世代だと思います。この世代の人々が初めて,他の惑星と交渉の可能性を持った一つの惑星としての地球を経験したのです。彼らはまた,宇宙技術や身近になったコンピュータ,戦略的核兵器やそれを他の惑星まで飛ばす長距離ミサイルを経験した最初の世代です。人間の活動によって,地球という惑星の崩壊の可能性を懸念するようになった最初の世代でもあります。この世代では,技術はいまだエリートだけのものでした。ほんの少数の者だけがその技術にアクセスできたのですから。

しかし,第三地球世代にして第二惑星世代の皆さんは,未曾有の情報氾濫を生み出したパソコンやハンドヘルド技術の革命の中へ生まれ出ました。冷戦の終焉を経験し,ラップトップ・ハンドヘルドITを受け入れました。この技術は,より小規模になった兵器技術と共に,戦争に使われてきましたが,しかし同時に,友人や家族とつながるだけでなく,自国内や世界中で平和と正義のために活動している人々のような,同じ興味を持つとか,共通の目標を追求している人々を結び付けもします。皆さんの世代は次の第四地球世代の方向を決めることになるでしょう。そこで,私の質問はこうです。「皆さんが技術を使うのは,兵器を宇宙へ持ち出すためですか?それとも地球の人々に対し,教育を強化するためでしょうか?」。

皆さんが直面しているこの世界は,非常に複雑でしばしば人を仰天させるものです。現在の課題は,以前の世代が直面してきたどの課題よりも大きなものです。一国の制度も,国際間の制度も危機に瀕しています。そしてどの国家もまた国連も,私たちが直面している環境問題,貧困問題,人権問題,紛争問題に適切に応えることはできません。戦争,テロ,報復テロの新たな様相の多くは,無知と軽蔑から生まれてきました。自分のものと異なる生活様式に対する無知が,万人の生命と人権を脅かしています。他人に関する情報がこれほどまでに得やすくなった時代にあって,世界とそこに生きる人々に対する無知は,悲劇以外の何物でもありません。世界中の貧困は,それを除去する可能性,すなわち生産と交換と分配の手段が依然より大きくなったにもかかわらず,さらに悪化しています。世界の人口の過半数が生計手段と尊厳を欠いています。その多くが15歳以下の若者であり,彼らの大半は教育を受けておらず,将来の展望を持たず,恐怖と喪失の中に生きています。それが暴力を引き起こす原因となっているのです。

6 結論…皆さんは何をしますか?

皆さんの世代は,大変な難問を抱えた複雑な世界を受け継ぎました。しかし,以前のどの世代も,今皆さんが問題に立ち向かうために手にしている道具は持っていませんでした。誰一人として,皆さんのように平和への道を学習し別の選択肢を探る機会を持っていなかったのです。今皆さんが習っている技術を使えば,全ての問題に向き合い,世界を変えることが可能です。しかしそれは,皆さんが真の意味で平和と人権を選び,その選択が導く目標を達成するために,皆さん自身の技術と道具を使う場合にのみ可能となります。

これが皆さんに対する最後の質問です。

「現在のITと次世代のITを手にする皆さんは,それをどのように使いますか?」

ITにアクセスできない,教育の機会を奪われた若者たちに向かって,どのように手を差し伸べますか?どのようにして,変革された新しい世界のビジョンの中に,彼らを引き込みますか?今,より良い世界をつくる活動に民主的に参加することを目指して行動するため,技術を使うことができますか?

最も大切なことは,どのような人生を生きたいか,ということです。皆さんの仕事が世界にどのような影響を与えることを望みますか?皆さんの技術をもって,どのような社会的,政治的な価値や大義に貢献したいと望みますか?

このように,今や皆さんは,自分たちの世代の目的を確定するという成人としての責任を引き受ける時です。もう一度,隣の人に向かって,この難問に答えるため,皆さんの受けている教育と技術をどのように使うかを伝えてください。(隣同士でこの最後のやりとりをするため,2分間が与えられた。)私は,今や皆さんが成人へのプロセスを開始されたと思います。皆さんは,一つの変化,一つの行動,そして皆さんが受けた教育の一つの利用法を考えました。現実に踏み出す第一歩の準備が整ったのです。皆さんがこの重大なプロセスをうまく進んでゆけますように。

熱心に聴いていただき,質問に答えていただいたことを感謝します。

(2003年10月8日)


ベティ・A・リアドン博士 Dr. Betty A. Reardon

コロンビア大学教育大学院平和教育学科の創設者であり,同大学院平和教育センターディレクター。また,国際平和教育学会(IIPE)のディレクターも務める。教育学博士号をコロンビア大学で,歴史学修士号をニューヨーク大学で取得。諸外国の大学および,初等,中等,高等レベルでの学校で,また学校外で豊富な教授経験を持つ。平和教育を,人間の安全保障,持続可能な開発,人権,環境,ジェンダーの問題など,広範かつ包括的な視野の内で捉える。ハーグ平和アピール平和教育地球キャンペーンの発起人の1人。40年にわたる国際平和教育運動,また25年におよぶ国際女性人権運動の経験を有し,数々の国連機関のコンサルタントも務めてきた。


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  • コロンビア大学教育大学院平和教育学科創設者
  • コロンビア大学教育大学院平和教育センター ディレクター

上記の肩書・経歴等はアキューム13号発刊当時のものです。