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Accumu Vol.16

Q-GAMES キューゲームス-会社紹介

copyright: 2007,2008 Q-Games Ltd., All Rights Reserved
copyright: 2007,2008 Q-Games Ltd., All Rights Reserved

京都に凄い会社があるキューゲームス決して大企業ではない社員数も30名規模でいえば小さいといえるし一般的な知名度も高いとはいえないしかし少数精鋭で世界最先端の技術を研究開発し誰もが驚くような成果を挙げているKCGの卒業生が勤務していることもあり今回京都市中京区にあるキューゲームスを訪問させていただいたどれほど凄い会社なのかリポートしたい

少数精鋭でゲーム開発の未来を切り拓く

代表取締役ディラン・カスバート氏
代表取締役
ディランカスバート氏

キューゲームスの代表取締役は1972年イギリス生まれのディランカスバート(Dylan Cuthbert)氏カスバート氏は世界でも有数の天才プログラマとして有名である

元々技術に強い関心を持っていたカスバート氏は子供の頃からコンピュータに興味を持ちプログラミングを行っていた16歳でゲームメーカーのアルゴノートゲームズPLCにプログラマとして就職その在籍中に2Dゲームソフトしか扱えなかった任天堂のゲームボーイの環境で3Dのコンテンツを実行してみせたこれには任天堂の開発陣も驚愕したそれがきっかけとなりアルゴノートと任天堂との契約により来日し任天堂で働くことになったそのときディラン氏は17歳だった

その後ディラン氏はソニーコンピュータエンターテインメントなどで経験を重ね2001年9月京都で有限会社キューゲームスを立ち上げた

キューゲームスの事業内容はゲームソフトの開発と次世代ゲーム機についてのR&D(Research and Development研究開発)であるこの会社の凄さは少数精鋭でゲーム機の未来を切り拓いていることにあるもちろん現在研究している内容は機密なのでわからないが同社の成果を一例だけ挙げると2006年11月に発売されたPS3ではOS用メニューグラフィック及びミュージックビジュアライザーの開発を担当しているPS3を起動させると最初に出てくるあの波の画面を開発したのがこのキューゲームスなのであるそれを聞くと多くの人は驚くに違いない

Pixel Junkシリーズ

開発マネージャー富永彰一氏
開発マネージャー
富永彰一氏

同社は独自のポリシーに基づきゲーム開発を行っているスタジオディレクター吉田謙太郎氏と開発マネージャー富永彰一氏にゲームソフトに関するお話を伺った

―2001年の設立以来これまでに様々なゲームソフトを開発されていますね例えば「デジドライブ」という作品はとてもアート感覚に溢れるゲームですよね音も映像も見ているだけで美しい

富永 ありがとうございますアーティスティックな作品と言われるの嬉しいですこの作品はあえて単純な点と形だけで世界を構成し鮮やかな色彩とサウンドを際立たせるように狙っています私たちはこの作品を通じてゲームの原点に立ち返ろうと考えたのです面白いゲームというのは実はシンプルな画面でも成立します最近は派手なグラフィックスを駆使した作品が多いですがこの作品ではあえて余分なものを極力そぎ落としていきたいと考えましたそうすることで原点に返ろうと思ったのです 

―その後キューゲームスではニンテンドーDS用のソフト「スターフォックスコマンド」の開発なども手がけられていますね 

富永 これは3Dのシューティングゲームですが特徴としてはタッチペンでタッチスクリーン上に触れることで戦闘機の進路を変えることができるようになっています右にスライドさせると機体が右に左にスライドさせると左にそして上下にタッチペンをスライドさせることで機首を上下させることができますその後もニンテンドーDS用のソフトの開発は継続して行っていますそれ以外に2007年からPS3用のソフトを「Pixel Junk」というレーベル名で独自に開発して発表しています 

―「Pixel Junk」について教えてください 

スタジオディレクター吉田謙太郎氏
スタジオディレクター
吉田謙太郎氏

吉田 「Pixel Junk」シリーズは弊社の独自のブランドでPS3のネットワークサービスプレイステーションストアで販売されるダウンロード配信専用ゲームです

2007年9月20日から配信を開始しています

以前であればパッケージ制作や流通経路の確保などゲーム制作には様々な事項をクリアしなければなりませんでしたでもゲームのネット配信が可能となりわれわれのような少人数の会社でも自社ブランドでのゲームを発表することが可能となりましたもちろんゲームのネット配信という形態はまだ始まったばかりでマーケットがどのように反応するのか未知数の部分もありますわれわれとしてはこれまでゲームをしたことのない層にも手軽に遊んでもらえるように値段も安く設定しました少人数かつ短期間で作成することにより制作コストを低く抑え低価格を実現したのですそれによって新規マーケットの開拓ということにチャレンジしていきたいと思っています 

―ゲームとしての特色はどのようなものですか 

吉田 一言でいうとワイドTVフルHDを活用しながら8ビットなフィーリングの2Dゲームのような感覚で楽しむゲームですハードの性能が向上するとそれにあわせてどうしてもグラフィックスに凝ったりしてしまい重厚長大なものになりがちです別にそれが悪いわけではないですがもっとカジュアルなゲームがあってもいいと思うのですハードの性能が低かった頃には2Dゲームしか作れなかったわけですが高性能なハードを使って2Dゲーム感覚のゲームソフトを作ったらどうなるんだろうとわれわれは考えました一種の逆転の発想です 

―キューゲームス独自のポリシーを感じますね 

富永 われわれは常に新しいことにチャレンジしたいと思っていますマンネリになったらそうでないことをしたいのですクリエイティブな集団でありたいです

Pixel Junkシリーズは6タイトルを計画し順次発表していく予定ですこれまでなかったような変わったタイトルもありますのでどうか期待してください

世界最先端の技術が生まれる現場

村上慧さん
村上慧さん

現在キューゲームスではKCGの卒業生が二人勤務しているそのうちの一人村上 慧さん(メディア情報学科ゲーム開発コース2007年3月卒)は小学生の頃からゲームを作りたいという夢を抱き京都市立洛陽工業高校を卒業した後KCGに入学高校時代からプログラミングをしていた彼はどんどん自分で勉強を深め周りの友人にC言語を教えるといった学生生活を送ったKCGの授業では一般教育科目の「心理学」が面白かったという卒業年次の2月頃に就職活動を始めたが卒業研究で作成した作品がキューゲームスのプログラマの目にとまり採用された就職活動で受験したのはキューゲームス一社のみだというキューゲームスは社長のほかにも日本以外の国籍のスタッフが多く国際的な雰囲気に満ちていて英語と日本語を織り交ぜながらコミュニケーションしている「社内で英会話教室が開かれていて参加しています毎日が勉強です」と目を輝かせながら村上さんは言った

福田篤史さん
福田篤史さん

もう一人の卒業生福田篤史さんは高校卒業後医学部を目指したが将来の目標をゲームプログラマに変更友人の誘いもあってKCGに入学「KCGは先生方も熱心で技術力も高いです業界のクリエイターの方に企画書を見ていただく機会もあったりして実践的に学べました業界のベテランよりも技術的に詳しい先生もいて卒業してからも指導を仰ぎたいと思うほどです」福田さんは実はキューゲームスの社員ではないKCG卒業後教員の推薦でゲーム会社に就職し現在は東京にあるゲーム会社ポリゴンマジック株式会社の社員である同社からの出向でキューゲームスで勤務している「キューゲームスはとても自由な雰囲気でファーストネームで呼び合ったりして日本の企業とはちょっと違う感じです」と福田さんは言う

Q-GAMES キューゲームス

確かにキューゲームスのオフィスは独特で机の配置もプロジェクトごとに動かせるように工夫されているスタッフ用の椅子は一つ15万円するという考えてみれば一日の大半をそこに座って過ごすのであるから質のよい椅子を用意するのは理に適っている通されたミーティングルームの机もミーティング以外のときは卓球台に早変わりするというこれも考えてみればとても合理的だオフィスの設計は社長であるカスバート氏が自ら行ったという一言でいうととてもクリエイティブな空間という印象だ印象的なのはスタッフ同士が緊密かつ自然にコミュニケーションをとりながら仕事を行っていることだこれが世界最先端の技術が生まれる現場なのであるそしてその現場でKCGの卒業生が活躍をしている

コンピュータ関連分野の場合少数精鋭で世界最先端の技術を駆使し誰もが驚くような成果を挙げているキューゲームスのような企業が存在するだからこの分野では知名度や規模で会社の良し悪しを判断してはいけない

この日カスバート氏はオフィスの中であちらの机こちらの机と動きながらスタッフとコミュニケーションをとっていたスタジオディレクターの吉田さんの言ったセリフがとても印象的だった「ディランはプログラミングが楽しくてしょうがないのですプログラミング以外のことはできればしたくないぐらい」