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Accumu Vol.24

KCGの学生チームが性犯罪撲滅へアプリを開発し発表

京都府警から依頼,得意のIT知識生かす

表彰状を誇らしげに持って記念撮影
表彰状を誇らしげに持って記念撮影

京都府警察本部 生活安全部・性犯罪対策プロジェクト班から性犯罪防止につながるスマートフォンアプリ開発の依頼を受けた京都コンピュータ学院(KCG)は,2015年5月に学系・学科を超えた6人の学生によるプロジェクトチーム「Mobile Police」を立ち上げ,ITを駆使しながら準備を進めてきた。そして11月16日,国立京都国際会館で開かれた「子どもと女性を守るシンポジウム〜調査研究に基づく新たな犯罪抑止対策」の席上,学生たちはこれまでの取り組みを紹介しながら,開発したアプリを発表,関係者の方々から高い評価をいただいた。

メンバーは,情報工学科4回生の足立嵩さんをリーダーに,情報科学科4回生の大藏瞬哉さん,ゲーム学科4回生の早田真侑子さん,コンピュータ工学科3回生の中嶋勇斗さん,メディア情報学科2回生の鈴木駿也さん,アート・デザイン学科2回生の菅谷美波さん(学年は当時)。

学生たちが開発したのは,

  1. Bluetooth通信を用いた被害通知アプリ(電車内などで痴漢に遭った被害者が,「BLEタグ」と呼ばれる小型の発信機のボタンを押すことで,周囲のスマホに被害を通知する)
  2. 京都府警発の防犯情報メールに基づく防犯地図表示アプリ(京都府警が配信する防犯情報メールをスマホ内でデータベース化し,最寄りの交番への経路などとともに地図にマッピングして表示する)
  3. 防犯の知識を対話的に学べるゲーム(女性が街中を歩きながら,危険な場面に遭遇したりそれを避けたりしつつ家にたどり着く)-。
2015年5月18日,京都府警の職員も交えたミーティング
2015年5月18日,京都府警の職員も交えたミーティング

いずれも企画から開発まで,KCGの教職員や京都府警担当者による意見を聴きながら,すべて学生たちが担当,授業後や休日を利用し,6人がプログラミング,デザインといったそれぞれの得意分野の力を出し合いながら,コツコツと開発してきた自信作。

①『通信タグによる被害通知アプリ』の概念図
痴漢の被害者がスマホを通して,周囲に助けを求めるアプリ
痴漢の被害者がスマホを通して,周囲に助けを求めるアプリ
通信タグのボタンを押すと,自分のスマホ経由でSOS信号が周囲に届く
通信タグのボタンを押すと,自分のスマホ経由でSOS信号が周囲に届く
周囲に被害を通知できる
②『防犯情報メールの地図化アプリ』の概念図
府警からの防犯情報メールを受け取ると,位置情報を地図上に反映
府警からの防犯情報メールを受け取ると,位置情報を地図上に反映
最寄りの交番の住所・電話番号・そこまでのルートを表示
最寄りの交番の住所・電話番号・そこまでのルートを表示
③防犯の知識を学べるゲーム
防犯の知識を学べるゲーム

11月16日には「新たな風を 私たちにできること,私たちだからこそできること〜情報通信技術を活用した新たな情報発信への挑戦」と銘打ち,それぞれのアプリを,開発を主担当した学生がデモンストレーションを交えて発表した。企画のもとになったのは「被害に遭う不安や性犯罪についての情報不足を感じながらも,具体的にどんな対策をとってよいのか分からない」という声が大半を占めた,京都府警による性犯罪意識調査の結果。プロジェクトチームの学生たちは「スマートフォンという身近なツールで,防犯に役立つアプリを提供できることが分かりました。今後も私たちのITの知識と環境を活かして,性犯罪の抑止に少しでも貢献できるよう努めていきます」と発表を締めくくり,会場から大きな拍手をいただいた。

「防犯情報メールの地図化アプリ」について発表する様子
「防犯情報メールの地図化アプリ」について発表する様子

アプリ開発とシンポジウムでの発表活動とが評価されて,メンバーは12月11日,京都府警から表彰されるという栄誉にも恵まれた。表彰式には4人のメンバーが出席し,生活安全部長の山根弘行警視正から感謝状を受けとった。リーダーの足立さんは,「KCGに入学した時には,プログラミングの知識は何もなかったので,表彰していただけるレベルにまで上達したことに,自分でも驚いている」と話した。半年かけて取り組んできた開発作業の努力が報われ,達成感と充実感が得られた瞬間だった。

京都府警から表彰状を受け取るリーダーの足立さん
京都府警から表彰状を受け取るリーダーの足立さん

Mobile Policeでの活動は,メンバー全員にとって貴重な経験となった。今回のアプリ開発を通して,プログラミング技能を向上させただけでなく,学内・学外でさまざまな体験をすることで,人間的にも成長することができた。KCGでは府警と連携してMobile Policeの活動を継続し,学生主導のITによる社会貢献を今後も推進していく意向だ。