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Accumu 京都コンピュータ学院創立50周年・京都情報大学院大学創立10周年記念式典

式辞 京都コンピュータ学院・京都情報大学院大学 統括理事長 長谷川亘

京都コンピュータ学院・京都情報大学院大学
統括理事長
長谷川 亘

本日ここに,関係各国の大使閣下ならびに大使館関係の皆様,京都府知事様,京都市長様,国内外の大学をはじめとする教育機関,各法人や多くの企業の皆々様にご臨席賜りましたことを,厚く御礼申しあげます。本学を代表して,式辞を述べさせていただきます。

京都コンピュータ学院は本年,創立50周年の佳節を迎えました。また,京都情報大学院大学は,2003年の京都コンピュータ学院創立40周年の記念式典においてその開学を宣言して以来,ちょうど10年となります。本日のこの佳き日を,来賓の皆様,卒業生・校友の皆様とご一緒に迎えることは,私ども教職員ならびに在学生にとって,大きな喜びです。

本学は現在,京都コンピュータ学院洛北校,鴨川校,京都駅前校,京都日本語研修センター,そして,京都情報大学院大学の京都本校,札幌サテライト,東京サテライトと,人材会社である株式会社KCGキャリアをもって,小さいながらも京都に拠点を置くKCGグループを構成しております。また,ニューヨークと北京,そして大連には,国際交流のためのオフィスを置いております。

京都コンピュータ学院の原点は,京都大学の卒業生である初代学院長・長谷川繁雄と現学院長・長谷川靖子が始めた私塾にあります。これは,中高校生対象の小さな塾でしたが,1963年(昭和38年)に,長谷川靖子が大学院生として所属していた京都大学理学部宇宙物理学教室や他の専攻の若手研究者のための「FORTRAN 研究会」を始めました。

その当時,コンピュータはごく一部の研究者だけのものでしたが,日を重ねるにつれ,その研究会は,近畿圏の企業関係の方々にも広く伝わることとなります。

本日は堀場雅夫様ご本人にご来臨賜っておりますが,株式会社堀場製作所様における最初期のコンピュータプログラムを作成したのは,長谷川靖子でした。そのご縁もあって堀場様には,京都情報大学院大学の設立発起人としてご参与いただいております。

1969年(昭和44年)に「京都コンピュータ学院」という校名を掲げて,高校卒業者を対象とする全日制課程が開設されました。そのとき,創立者である初代学院長・長谷川繁雄は「ソフトウェアとは,ものの考え方のことであって,哲学の一種であり,これは人類史を変革する」という言葉を残しております。

その後,1976年には新法制による専修学校認可をいただき,長谷川靖子の指導教授,京都大学理学部宇宙物理学教室の宮本正太郎先生が名誉学院長に就任されました。

爾来,本学は常にソフトウェア技術の学問的性格を重視し,単なる技術知識の伝授に終始することなく,理論を重視したコンピュータの教育を実践してまいりました。教育理念である「時代を担う創造性豊かな情報処理技術者の育成」は,時を経ても変わることなく受け継がれており,本学の教育哲学の根幹をなしております。

本学は,古くから関係の深い京都大学をはじめとし,アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)やハーバード大学,ロチェスター工科大学(RIT),コロンビア大学など,海外の諸大学とも密接な関係を持ちながら,コンピュータ関係のみならず,各分野で先達に学びつつ,常に,教育理念を踏まえ,「学校としての情報教育の本質」を極めようと努力してまいりました。

1996年には,ロチェスター工科大学(RIT)と姉妹校提携を行い,その2年後からITプロフェッショナル大学院教育の単位互換学科を,国内専修学校の専門課程として開設しました。同じ頃,本学関係者が当時マサチューセッツ工科大学(MIT)に在籍していた関係で,本学は「.edu」のドメインを取得しました。「.edu」は米国連邦政府が認証する高等教育機関のみに与えられるドメインであり,インターネットの黎明期において,日本国内に本拠地を置く教育機関の中,「.edu」を取得できたのは本学のみでしたので,それを記念する意味もあり,本学の徽章は「kcɡ.edu」に制定されました。

1997年には,専修学校(専門学校)から大学への編入学が法的に可能となり,追って,4年制専修学校から大学院への進学が可能となりました。人事院勧告でも,4年制専修学校卒業生が,4年制大学卒業生と同等の給与水準となるなど,専修学校と大学との差異はほとんどなくなりました。

そして,さらに,専門職大学院制度が法制化されましたので,その初年度となる2004年には,創立者の念願であった大学認可をいただき,IT専門職分野における国内での最高学位を授与する京都情報大学院大学を開学いたしました。これは,IT業界のリーダーとなるべき高度専門職業人を育成する日本最初のIT専門職大学院として,高い評価をいただいております。その一例として,昨年の『週刊東洋経済』の大学ランキングでは,京都情報大学院大学は全国の私立大学619校のうち,過去5年間の成長度においては日本一の栄冠をいただきました。このような光栄な評価をいただくことができたのは,卒業生や修了生そして在学生と,何よりも本学を温かく見守ってくださった関係の皆様のおかげです。京都情報大学院大学は昨年4月に札幌,10月には東京にサテライトを開設し,京都からeラーニングでの授業を配信しています。

京都情報大学院大学は,開学当初から,初代学長・萩原宏の下,アジア全域を対象とするITプロフェッショナルスクールを目指して,海外他国の大学との提携を進めてまいりました。中国では天津科技大学の他,数多くの大学,韓国の高麗大学校情報保護大学院(情報セキュリティ大学院),遠くはチェコのオストラバ工科大学やパルドゥビッツェ大学など,世界の多くの大学と学術交流や姉妹校の協定を締結しております。海外の提携大学は90校以上にのぼり,各大学から多くの留学生が本学で学び卒業しています。海外の大学とは,第二代学長・長谷川利治の頃から,インターネットを介しての合同授業の実験なども進めてまいりました。

本学と海外諸国との良きお付き合いは,外務省ならびにJICA(独立行政法人国際協力機構)のご指導ご協力の下,継続的に発展しております。本学は,1989年から,発展途上国支援を開始し,当該国政府と合弁して,パソコンの大量寄贈と教員指導,カリキュラム設計などを行ってきました。その対象国は23ヵ国にのぼります。本日は大使閣下にご来臨賜っておりますが,近年ではボスニア・ヘルツェゴビナや,キルギス共和国,パプアニューギニア独立国に対しパソコンを寄贈いたしました。寄贈したパソコンは各大学でコンピュータ教育に活用されています。パプアニューギニア独立国のゴロカ大学には,コンピュータ室「KCG Lab」が開設されました。

また,ハイブリッドやEV(電気自動車)など,自動車のIT化に即応すべく,2005年に日本初の「自動車制御学科」を開設しました。自動車はもはやコンピュータが制御するロボットであり,完全に自律して人を目的地に連れて行ってくれるレベルに達しています。教職員と学生とでレースにも参戦し,自動車に搭載される組込みシステムを中心に,車体構造の理論なども含めた教育を展開しております。

2009年,一般社団法人情報処理学会より「分散コンピュータ博物館」第一号の認定をいただき,以来,本学が保存するコンピュータのうち5機種が情報処理技術遺産に認定されております。本学は,過去に学生が使用してきたコンピュータの大半を保存していますが,アジア一番のコンピュータコレクションかと思われます。

本学創立者が標榜したように,ソフトウェアはハードウェアという実体を伴い,「人類史を変革」し続けています。自動車や電気製品のみならず,日本が世界に誇るマンガやアニメも現在急速にIT化が進んでいます。そのため,実績ある実務系教授を招聘し,大学院にはコンテンツビジネスコースを設置いたしました。日本が世界に誇るマンガやアニメなどコンテンツ産業を支えるICT分野の高度専門職業人を育成しています。

本学は昨年,京都府知事様から唯一の支持をいただきまして,インターネットの「.kyoto」(ドット京都)ドメイン管理運営事業主体となります。実際の社会であるフィジカル世界に対応して,インターネットの世界,つまりサイバー世界に「京都」の街が生まれます。これは,京都府様,京都市様,京都商工会議所様,京都府警察本部様などのご協力をいただきながら,産官学共同のオール京都の事業として,京都府の社会経済の発展に寄与することを期待しています。京都は大学の街でもあります。「.kyoto」にeラーニング・ポータルサイトを創出すると,サイバー世界の京都にも,世界中から優秀な学生が学びに来ることでしょう。

京都が生んだ日本最初のコンピュータの学校は,千年の都,京都の街とともに,日本最初のIT専門職大学院を生み出しました。本学で学び育ち社会に巣立っていった卒業生は4万人を超えます。これは,IT,情報,コンピュータの分野だけでの卒業生数ですから,かなり多いと言えるでしょう。本学は,国内のみならず世界各国でも高い評価をいただいておりますが,これはひとえに,多くの卒業生の皆様の社会でのご活躍によるものであり,そしてそれがまさに,私ども教職員の誇りです。

小さいながらも長い歴史を持つコンピュータの学校であるからこそ,全ての世代に卒業生が存在し,かつ,情報通信のスキルを生かしてネットワークが構築されています。人と人とのネットワークを大切にする技術者を大量に輩出してきたことは,本学が最も誇るところです。在学生も, KCG伝統のパイオニア精神をもって,友達同士協力し合い,立派な先輩方に続いてください。KCGグループのファミリーである皆様が,それぞれの道を力強く歩まれ,自らの未来を切り拓いていかれることを,本学の教職員は,いつも心から願い,全面的に応援しております。

50年という歴史の中で,私どもは,大勢の方々の温かいご支援をいただいてまいりました。最後になりましたが,本日ご臨席の皆様,関係の皆様に,心から御礼申しあげるとともに,京都コンピュータ学院ならびに京都情報大学院大学,KCGグループの発展に,今後とも変わらぬご支援ご協力と,ご指導ご鞭撻を賜わりますよう,教職員一同,お願い申しあげます。

本日は,お忙しい中,ご来臨賜り,本当にありがとうございました。